◆ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12 ファイナル▽決勝 日本0―4台湾(24日・東京ドーム)
放物線を描く打球を目で追いながら、戸郷は頭に手を乗せてため息をついた。0―0で迎えた5回、先頭の8番・林家正に150キロの真ん中直球を右中間席へ運ばれ、先取点を献上。さらに安打や四球で1死一、二塁から、3番・陳傑憲に内角低めの150キロ直球を右翼席へ3ランを運ばれた。痛恨の2被弾で5回95球7安打4失点。「僕の中ではいい球ではあった。それを本塁打にされるのは実力不足。みんなのおかげで決勝にこられたところで悔しい結果になって申し訳ない」。世界一をかけたマウンドで結果を残すことはできなかった。
日本代表としての覚悟を胸にマウンドに上がった。「僕にかかっていると思うので全力で投げたい」と気合十分に臨んだ決勝。前回18日の1次L・ドミニカ共和国戦(台湾・天母)は、不慣れな地で初回から失点し、4回2失点と満足いくものでなかっただけに力が入った。7Kを奪ったが、国際大会初勝利もお預け。「監督に世界一の称号をつけたかった。責任を感じます」と肩を落とした。
持ち前のタフさで最後まで走り抜けた。公式戦、CS、強化試合、プレミアも合わせ3213球、200イニングに到達した。「昔から川に泳ぎに行ってクロールとかをして、普段回らないところまで肩を使ってる」と地元・宮崎の自然で鍛えられた肩甲骨や胸郭回りは、人より柔らかい。プロ入り後も毎週プールで泳ぎ、ストレッチにもこだわってきた。今では多くの侍戦士たちから助言を求められるまで成長した。
24年のプロ野球を締めくくる一戦は悔いの残るものとなった。「僕自身も成長していかないと。この悔しさを来季晴らして(26年の)WBCに選ばれるように。世界大会での借りは世界大会でしか返せないと思うので精進していきたい」。敗戦をバネに、さらに強くなる。(水上 智恵)
◆記録メモ ▼初の決勝敗退 日本は台湾に敗れ、プレミア12の連覇はならなかった。プロ選手が出場した(99年以降)五輪、WBC、プレミア12の3大大会での決勝は、06年WBCから5連勝中だったが、初黒星になった(アマ選手だけで臨んだ五輪決勝は84年○、88年●、96年●)。
また完封負けは、09年WBC1次R・韓国戦以来、4度目、台湾戦では初。4安打は17年WBC準決勝・米国戦に並ぶ、最少安打だった。