国内フリーエージェント(FA)権を行使した阪神・大山悠輔内野手(29)が29日、兵庫・西宮市内の球団施設で会見し、残留を表明した。年俸3億4000万円プラス出来高で、鳥谷敬(2015~19年)に並ぶ球団最長5年契約(金額は推定)。条件では対抗馬の巨人が上回っていたが、金銭面を決断理由とせず熟考を重ねて“男気残留”した。
すっきりした表情だった。ネイビーのスーツに身を包んだ大山は無数のフラッシュを浴びながら、力強く表明した。「来年からもタイガースでプレーすることを決めました」。28日の選手会納会から一夜明けたこの日、球団最長タイ5年契約、年俸3億4000万円プラス出来高で合意。熱烈オファーのあった巨人は6年24億円超を用意して条件面で大きく上回っていたが、悩み抜いた末に猛虎愛を貫いた。
「他球団の評価を聞いてみたい」と13日にFA宣言。「決断についていく」と背中を押してくれた愛妻に支えられ、自問自答の日々を過ごした。決断に至った一番の理由を問われると「もう一番が多すぎて」と口にし、藤川新監督、チームメート、裏方スタッフに対する気持ちを吐露。そして、参加した23日のファン感謝デーの大歓声、昨年の日本シリーズを思い返した。
「スタンドで多くの方が僕の(名前が書かれた)赤いタオルを掲げてくれて、すごくうれしかったですし、そのタオルをもっと増やしたいなと思いました。あと、一番忘れられないのは去年の日本シリーズ。地鳴りのような、あの感動は忘れられないってのもあるので、もっともっと感じたい」
巨人からの誠意にも感謝は尽きない。「自分自身、勉強になることは色々ありましたし、そこは本当に感謝しかない」。阿部監督や坂本らの公開ラブコールにも「素直にうれしかったですし、あれだけ活躍されている方が自分を思ってくれたっていうのは、すごくうれしかった」と頭を下げた。
腹をくくった以上、あとは2年ぶりのV奪回を目指すのみだ。指揮官には真っ先に残留を電話で報告し、「一緒に頑張ろう」と言葉をもらって決意を新たにした。「覚悟をもってやりたいです。プレーで感謝の気持ちを返せるように」。来季こそ虎の主砲として、再び甲子園にあの地鳴りを起こす。(小松 真也)