ここぞで大谷! 2打席連続で大谷! こんな夢のような展開が将来、あるかもしれない。米大リーグ(MLB)のロブ・マンフレッド・コミッショナー(66)が、新ルール「ゴールデン・アット・バット」導入の議論がされている、と明かしたことを米メディアが報じた。打順に関係なく1試合に1度限り、好きな打者を起用できる仰天ルールで、詳細を含め議論の余地は大いにある段階だという。賛否両論あることは必至だが、話題性のあるルール変更案と言える。
もはや何でもあり?と首をかしげたくなるようなルール導入が、メジャーで議論されている。米メディア「ジ・アスレチック」は、マンフレッド・コミッショナーが、スポーツ・ビジネス・ジャーナルのJ・オーランド記者のポッドキャストに出演した際に、「さまざまな(ルール変更の)アイデアが議論されている。そのうちの一つはオーナー会議で少し話題になった『ゴールデン・アット・バット』だ」と語ったことを報じた。
チームの最強打者を、1試合に1度だけ、最高の場面で「ジョーカー」のように起用できる仰天ルールだ。例えば9回裏2死満塁、一打逆転サヨナラという場面で、ドジャースが打順に関係なく大谷を打席に送る。盛り上がりは必至だろう。
同メディアは取材で聞いたとして
《1》両軍が、イニングに関係なく、1試合につき1度だけ権利を使う
《2》7回以降に限る
《3》9回以降に負けているか、同点のチームだけが使う、
などの複数の条件を提案している。
だが、数々の疑問が浮かぶ。起用されて出塁したとして、塁上に残ったまま本来の打順が回ると、その走者はどうなるのか。また条件なしの前述《1》の条件で、大谷が全162試合で起用されたとする。今季は731打席で54本塁打だったが、162打席増えれば計算上、65・9本。打席数も一人だけはね上がり、記録の不公平感を覚える人も出るだろう。過去の記録との整合性も困難を極めそうだが「ルールやそれに類するものは、今のところ議論の段階に過ぎない」とコミッショナーは話している。
同記事は23年WBC決勝で大谷とトラウトが対戦したようなスター対決が実現することは、ファンはうれしいかもしれないと理解を示しつつ、伏兵がシンデレラボーイとなるのも野球の面白さであると指摘した。
ブルワーズのC・イエリチ外野手(32)は「エキシビションゲームなら、興行の価値を高める意味で、クールなことかもしれない」と非公式戦限定で好意的な考え。一方、ドジャースのF・フリーマン内野手(35)は「ショウヘイが20回打席に立つなら、当然見たいし、チームにも有利だけど、自分は保守派。野球の原理主義者だから、ノーだ」と反対。「じゃあ6回まで普通にプレーして、残り3回はホームランダービーで決めればいいんじゃないか」と、皮肉交じりに答えている。
◆「ゴールデン・アット・バット」とは
打順関係なく1試合に1度、好きな打者を起用できる
【主な権利の行使案】
《1》両軍がイニングに関係なく
《2》7回以降に限る
《3》9回以降に負けているか、同点のチームだけ
◆もし実現したら…
▼サヨナラ機で大谷
3点を追う9回裏2死満塁、一発が出れば逆転サヨナラの場面で最もアーチが期待できる打者を送ることができる。
▼2打席連続で大谷
「1番・DH」が今季の基本打順だった大谷。例えばチャンスで回った9番打者に使えば、2打者連続で大谷が打席に立つことになる。史上初の同一打者による連弾も生まれる!?
▼打点爆増
必然的にチャンスでの打席数が増えることになる。今季、大谷が打ち立てた日本人最多130打点更新はおろか、1930年カブスのH・ウィルソンが持つメジャー記録191打点も視野に入る!?
◆近年にMLBが導入したルール
▽ピッチクロック(23年)
投手は走者なしで15秒以内、走者がいる場合は20秒以内に投球動作に入る。後者は今季18秒に短縮された。試合時間の短縮が目的。違反すると投手はボール、打者がストライクが課される。
▽けん制回数制限(同)
けん制球は、3度目までにアウトにしなければボークとなり、走者は自動的に進塁する。事実上、1打席2度までとなった。
▽守備シフト制限(同)
内野手を4人(二塁ベースを挟んで2人ずつ)配置することが義務付けられた。
▽ベースの大型化(同)
本塁を除く各ベースが15インチ(約38.1センチ)四方から18インチ(約45.72センチ)四方に拡大。盗塁成功率を高め、接触プレーでの負傷軽減が目的。
▽粘着物質規制(21年)
粘着物質禁止が厳格化。先発投手は初回終了後に手やグラブを検査されるようになった。
▽打者3人ルール(20年)
救援投手が登板する場合は最低でも打者3人と対戦するか、イニング終了まで投げなければならない。