歌舞伎俳優の中村七之助が3日、東京・歌舞伎座で初日を迎えた「十二月大歌舞伎」(26日千秋楽)の第2部「鷺娘(さぎむすめ)」に出演した。
長唄舞踊の名作。幕が開くと、しんしんと雪の降る水辺に、綿帽子に白無垢姿の娘が一人たたずんでいる。傘を差した娘は、人間との道ならぬ恋に悩む鷺の精(七之助)。恋に思い悩む様子を踊りで見せるが、ところどころに鷺の精であることを想起させる。衣裳が引き抜かれ、艶やかな町娘の姿となると、客席からは驚きとガラッと変わった雰囲気への期待感に包まれる。
曲調も変わり、恋しい男と結ばれた頃の様子を踊ると、今度は男心のつれなさを訴える。美しい娘が踊る女心にうっとりしていると、舞台は降りしきる雪の中へ。恋の妄執が甦り、ついに鷺の精の本性をあらわす。
幻想的な美しさの中で激しく凄まじく踊る幕切れに、場内は大きな拍手に包まれた。七之助は「お客様を異次元の世界に誘うことができるよう勤めます」と話している。