ドジャース・大谷翔平投手(30)が、移籍1年目の米7年目で2年連続3度目となるMVPに輝いた。昨季の時点で前人未到2度目の満票受賞だったが、自身の記録を更新する3度目の満票。リーグが変わっての2年連続は史上初だった。対戦チームやプレーする球場を大きく変えても大谷には問題なし。自身初のポストシーズン出場でワールドチャンピオンにも輝き、打者に専念したシーズンながら文句なしの大活躍だった。
今季の大谷で最も注目が集まった記録は、流行語大賞の候補にもなった「50―50」(50発&50盗塁)だ。8月23日にサヨナラ満弾でド派手に史上最速(出場126試合目)で史上6人目の「40―40」を決めると、9月19日には自身初の3打席連続弾など6打数6安打10打点、2盗塁の大暴れで史上初の「50―50」を達成。最終的には「54―59」にまで数字を伸ばした。投打の二刀流の両立でこれまでは驚かせ続けてきたが、パワーとスピードという2つをも体現してみせた。
54本塁打と130打点の2冠王は日本人初。打率も3割1分のリーグ2位で、(打数が変わらず)あと3安打を放っていれば、4厘差の1位・アラエス(パドレス)を抜いて、12年カブレラ(タイガース)以来12年ぶり、ナ・リーグでは1937年メドウィック(カージナルス)以来87年ぶりの3冠王だった。「50―50」の偉業の陰に隠れているが、日本人初のトリプルスリー(3割、30発、30盗塁)もしっかり達成した。
さらに134得点、出塁率.390、長打率.646、OPS1.036、99長打、411塁打などもリーグトップ。エドガー・マルティネス賞、ハンク・アーロン賞、オールMLB、シルバースラッガー賞などの表彰もさらった。加入1年目ながら、本塁打、打点、長打、10試合連続打点など球団新記録も数多く樹立した。
シーズン54発はアジア人史上最多で、ドジャース新記録。4月23日の敵地・ナショナルズ戦での6号、7月27日の敵地・アストロズ戦での32号はともに打球速度が118.7マイル(約191.0キロ)で、本塁打の中では自己最速をマークした。すべての打球の自己最速は4月27日の敵地・ブルージェイズ戦で花巻東高の先輩だった菊池から放った右前安打の119.2マイル(約191.8キロ)。平均の打球速度はジャッジ(ヤンキース)に次ぐ95.8マイル(約154.2キロ)で2位だったが、今季からデータサイト「Baseball Savant」で公開された平均スイングスピードでは最速がスタントン(ヤンキース)の81.3マイル(約130.8キロ)で、大谷は76.3マイル(約122.8キロ)で8位だった。最上位クラスにはいるが、トップではない中でこれだけの数字を残すのは、数値化できない打撃技術が優れているということだ。
今季の大谷で最も驚きだったのは盗塁数の激増だろう。昨季までの最多が21年の26。6月までは16と爆発的には増えていなかったが、7月からの3か月で43盗塁。その間、失敗は2つだけで、ポストシーズンでは失敗があったが、36連続成功と確実性が光った。イチローが持っていた01年の56盗塁を抜いて日本人シーズン新記録を樹立。7月以降は77戦43盗塁とあって、162試合に換算すると90.5個ペースだった。(安藤 宏太)