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離島から甲子園を目指す快進撃のウラで 島外への遠征費は年間600万円以上…21世紀枠候補発表

スポーツ報知 2024年12月14日 7時0分

 日本高野連は13日、来春の第97回センバツ高校野球大会(3月18日開幕・甲子園)に出場する21世紀枠の各地区候補9校を発表した。九州は、玄界灘に浮かぶ壱岐島にある壱岐(長崎)が選出された。全て島民の選手21人が今秋の県大会で準優勝、九州大会で1勝を挙げる快進撃。島民約2万3000人の悲願「壱岐から甲子園」まで、あと一歩に迫った。来年1月24日の選考委員会で、21世紀枠2校を含む出場32校が決まる。

 夢の甲子園球場まで532キロ。壱岐ナインが黒土の聖地に立つまで、あとわずかに迫った。来春センバツの21世紀枠九州地区の候補校に選ばれ、坂本徹監督(40)は表情を引き締めた。

 「評価していただいたことに、率直に感謝したいです」。選手21人、マネジャー4人の部員25人全員が壱岐島出身。指揮官が「選んでいただいたことに感謝の気持ちを持とう」「甲子園で勝てるように意識を変えて、練習に取り組んでいこう」と呼びかけると、ナインは力強くうなずいた。

 合言葉は「壱岐から甲子園!」。今秋の県大会準々決勝では、この夏に2年連続で夏の甲子園に出場した創成館に2―0で完封勝ち。決勝で海星に4―6で惜敗したが、創部49年目で春秋通じて初の九州大会出場を決めた。初戦の専大熊本玉名戦では6―3で勝利し、8強入り。準々決勝でエナジックスポーツ(沖縄)に2―9で7回コールド負けしたが、島民から「100年に1度の奇跡」と呼ばれる感動を巻き起こした。

 エースの浦上脩吾(2年)ら郷ノ浦中時代に九州選抜大会を制した選手が8人ベンチ入り。軟式で県大会を制した勝本中出身の7人もメンバーに並ぶ。さらに1年生世代は壱岐市選抜として23年の離島甲子園で優勝。実力は本物だ。島外への遠征はフェリーなどを利用するため、1度で約30万円かかり、年間約20度の遠征で約600万円以上の負担になる。九州大会への出発時、港では島民が大漁旗を掲げて見送るなど、島全体で後押ししてきた。「育ててもらった壱岐島の皆さんに恩返ししたい」と坂本監督。島民の夢は、正夢になるか。(加藤 弘士)

 ◆記録メモ

 ▼島の学校で出場は過去8校 壱岐(長崎)が九州地区推薦校に初選出された。過去、島(沖縄本島除く)の学校で春夏の甲子園に出場したのは(円内数字は出場回数、白ヌキは21世紀枠回数)

洲本(兵庫)〈3〉《1》(4度)

久賀(現周防大島・山口)〈2〉

八重山商工(沖縄)〈2〉

大島(鹿児島)〈1〉《1》(2度)

佐渡(新潟)《1》

隠岐(島根)《1》

小豆島(現小豆島中央・香川)《1》

大崎(長崎)〈1〉

の8校。壱岐はどうか?

 ▼初の地区推薦選出 関東・東京地区は横浜清陵(神奈川)。47都道府県で唯一、地区推薦選出ゼロだった神奈川から初の選出。

 ◆壱岐島(いきのしま) 長崎・壱岐市の離島で九州と対馬の間に位置する。壱岐市の人口は2万3778人(11月末時点)。鎌倉時代の2度の「元寇(げんこう)」では、元軍と島民との間で激しい戦いが行われた。市内には18の小学校と4つの中学校があり、高校は壱岐と壱岐商の2校がある。交通路は長崎空港から飛行機で30分、唐津港からフェリーで1時間40分、博多ふ頭から高速船で70分、フェリーで2時間20分などが用意されている。

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