東京六大学野球リーグの慶大は14日、横浜市内の日吉キャンパスで納会を行った。堀井哲也監督(62)は来春リーグ戦の開幕に照準を絞り、今秋5位からの巻き返しへ力を込めた。
突然だった。大教室の壇上でスピーチをしていた堀井監督が、木暮瞬哉投手(3年=小山台)へと尋ねた。
「木暮、あと何日?」
「119日です」
「もう(夕方で)1日終わったから、118日だな」
主語がなくても通じ合う。それは2025年の春季リーグ戦開幕日までの日数を指していた。木暮投手、ご名答だった。
指揮官は今年を振り返り、言った。「春3位、秋5位…去年(秋)の日本一からすると、悔しい1年だったと思う。4年生はそこから学び、これからの人生に生かす。3年生以下は、来年以降に生かす年にしてほしい」。全てを糧にするよう、ナインに求めた。
最後に光も射した。秋の最終カード・早慶戦では直後に優勝を決めた早大に2連勝し、勝ち点を奪取した。堀井監督は師の前田祐吉監督に思いを馳せ、語った。
「エンジョイ・ベースボールを提唱した前田監督がよくおっしゃったのは、『とにかく早慶戦に勝つんだ』ということ。当時の私は『それは優勝に代えられるものなのか?』という疑問があった。だがこの秋の早慶戦後、応援指導部のOBの方から『連勝した時のスタンドが、去年の日本一より盛り上がっていたよ』と言われた。前田さんが言っていたのは、こういうことなのかな…と思ったんです」
秋の早慶戦を制した勢いは事実、長いオフシーズンで練習に打ち込む上での原動力になっている。堀井監督は続けた。
「3年生以下が寒い中、充実した練習をしている。長いオフを乗り切る、そういうムードを感じている。これは4年生の、3年生以下に対するプレゼントだと思っています」
「118日」という時間は平等に用意されている。どう使うかは各自の自由だ。指揮官は呼びかけた。
「3年生以下は、この冬にかかっています。この1分1秒を切り刻んで、血や肉にして、新チームを作ってほしい」
V字回復には鍛錬あるのみ。陸の王者の、新たな挑戦が始まった。(加藤 弘士)