「第49回報知映画賞」の表彰式が16日、東京・渋谷区のセルリアンタワー東急ホテルで行われた。
「正体」(藤井道人監督)で2年連続の主演男優賞を受賞した横浜流星(28)は、来年のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(日曜・後8時)の取材会から駆けつけ、ブロンズ像を手にした。2022年の助演男優賞も含め報知映画賞史上初の3年連続受賞にも「自分の力だけじゃなくて、『正体』に携わってくださったみなさんのおかげ」と謙虚に感謝。「いち役者として、日本映画を背負って届けていこうという責任感が芽生えた」と思いを込めた。「正体」は作品賞、助演女優賞も獲得し、3冠となった。
今年の活躍を象徴するような、分刻みのスケジュール。横浜は、NHKで行われた「べらぼう」の取材会を終え、大急ぎで会場のセルリアンタワー東急ホテルに駆けつけた。怒とうの一日となったが、表彰式を終えるとほっと一息。「自分を選んでいただけることをうれしく思いますし、でも、それは自分の力じゃなくて、『正体』に携わってくださった方の力だと思っている」と語った。
藤井監督と「流星の主演映画を作ろう」と語り合った日々から4年をかけ、公開にこぎつけた「正体」。「最初は(題材も)『正体』じゃなかったですし、自分たちの力不足で実現しなくて。でも、お互い力をつけた今だから、吉岡(里帆)さんをはじめとしたすてきな人々だったり、『正体』にも出会えた。タイミングというか、すべてがつながったというか…」と感慨深げだ。
先週末には自ら劇場に足を運び、観客と一緒に映画を体感した。文字通り“正体”を隠してのお忍び観賞。「そのあとの、みなさんの思いがあふれている雑談タイムを生で聞いて、みなさんが自分ごとのように捉えて受け取ってくださっていた。心に届いたことが幸せだなあと思います」と語った。
もう一つの“表彰状”にも胸が熱くなった。花束ゲストで登壇した阿部寛(60)は、横浜のために手書きの巻物を持参しスピーチ。降壇時に阿部から巻物を受け取り、「こういうところが阿部さんの好きなところ。宝物です」と優しい笑みを浮かべた。「先輩への憧れを芝居の時は捨てて、ちゃんとぶつかることが役として生きることなんだと、阿部さんが作品を通じて教えてくださった。改めてその気持ちを思い出しました」と背筋を正した。
3個目となった報知映画賞のブロンズ像は、過去2つの像が並ぶ自宅リビングのショーケースに飾る予定。「目につくところにあると、活力になりますし、見ることによって『頑張ろう』って思える」。受賞によって、役作りへのスタンスが著しく変わるわけではない。「でも、より強く、作品を背負う、役を生きるという気持ちになれます。日本映画をしっかり、いち役者として背負って届けていく責任感は芽生えています」と向上心を持って進んでいくつもりだ。
“べらぼう”に忙しい一日を終え、17日からは再び大河モード。江戸時代に出版で名をはせた主人公・蔦屋重三郎を演じる。「江戸、戻れるかな。明日からまた江戸に行ってテンションを上げていきます」。感謝を忘れず、真摯(しんし)に作品と向き合いながら、毎年を「当たり年」に更新していく。(宮路 美穂)
「変わらない」ところ魅力 〇…22年のTBS系ドラマ「DCU」での共演を機に、公私で親交のある阿部は、花束を手に登壇し横浜と抱擁を交わした。初めて共演した時に横浜の「情熱と研究心」に心打たれたことを明かし「映像界を背負って立つ人間になると思いました」と予感したという。「彼の魅力は『変わらない』ところ。こういう賞を取っても最終段階は彼のままで、一番信頼される魅力だと思います」とたたえた。
◆横浜 流星(よこはま・りゅうせい)1996年9月16日、神奈川県出身。28歳。雑誌モデルを経て、2011年に「仮面ライダーフォーゼ」でドラマ初出演。14~15年の「烈車戦隊トッキュウジャー」で注目を集める。19年のTBS系ドラマ「初めて恋をした日に読む話」で一躍人気俳優に。現在は主演するABEMA連続ドラマ「わかっていても the shapes of love」が配信中。
〇…表彰に先立ち、主催者を代表して報知新聞社の依田裕彦代表取締役社長があいさつした。コロナ禍を経て映画業界は上映本数、興行収入が増加傾向にあり「日本の映画界の確かな回復の足どりを感じています」。報知映画賞は今回で49回目を迎えたが、「大きな節目となる50回まで、あとひと息まで歩んでくることができました。映画ファンの開拓、拡大に精いっぱい取り組んでまいりたい」と話した。
◆選考委員 荒木久文(映画評論家)、木村直子(読売新聞文化部映画担当)、見城徹(株式会社幻冬舎代表取締役社長)、藤田晋(株式会社サイバーエージェント代表取締役)、松本志のぶ(フリーアナウンサー)、YOU(タレント)、LiLiCo(映画コメンテーター)、渡辺祥子(映画評論家)の各氏(五十音順)と報知新聞映画担当。