「第49回報知映画賞」の表彰式が16日、東京・渋谷区のセルリアンタワー東急ホテルで行われた。
「明日を綴る写真館」(秋山純監督)で特別賞の平泉成(80)は、芸歴60年で初の映画賞受賞に喜びをかみ締めた。
俳優生活60年。御年80歳にして初受賞の緊張から、平泉の顔がわずかにこわばった。「ながーいことやってきましたけど、このような賞を頂くのは初めてです。『土のついた根菜のような役者になりたい』。ピカピカ光るものは、似合わない。土がついているのは、その方が長持ちするから。そう思って60年やってきました」
高まる鼓動とは裏腹に、不思議と視界は開けていた。目に入ったのは、円卓に座る妻・里香さんの姿。スタッフや共演者への感謝を述べた後、「忘れてはいけないのが、うちのかみさん。こんな夢のようなことが起きました」と壇上から笑顔で報告。「自分より、かみさんや娘が喜んでくれまして」と感慨に浸った。
花束ゲストとしてサプライズ登場したのは、「息子」のように目を掛けるAぇ!groupの佐野晶哉(22)。今作で師弟関係のカメラマンを演じたことを契機に、日頃から連絡する仲になった。佐野が「『80歳にして夢がかなう、こんなステキな仕事はないぞ』と語ってくれたことを覚えています」と祝福すると、平泉は「まだ80歳。やり残したことがたくさんあります。まだまだ頑張らないといかんですねぇ」。
今年6月の誕生日に佐野から贈られ、この日着用したネクタイとスカーフを大事そうに触りながら「まだまだ」の中身を明かしてくれた。「やっぱり主演男優賞、助演男優賞ですかね。こういう場に出させてもらい、余計にそんな気持ちが湧いてきましたね。やらないといけないですね」。そう笑うと、平泉は言葉を重ねた。「まだまだ、まだまだね」(田中 雄己)
◆平泉 成(ひらいずみ・せい)1944年6月2日、愛知県生まれ。80歳。64年に大映京都第4期ニューフェイスに選ばれ、66年の「酔いどれ博士」で映画デビュー。主なドラマは96年開始の「はみだし刑事情熱系」シリーズ、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」(2013年度前期)など。主な映画は「その男、凶暴につき」(89年)、「20歳のソウル」(22年)など。
◆選考委員 荒木久文(映画評論家)、木村直子(読売新聞文化部映画担当)、見城徹(株式会社幻冬舎代表取締役社長)、藤田晋(株式会社サイバーエージェント代表取締役)、松本志のぶ(フリーアナウンサー)、YOU(タレント)、LiLiCo(映画コメンテーター)、渡辺祥子(映画評論家)の各氏(五十音順)と報知新聞映画担当。