サバイバルに吹き込まれた新風に、オコエの胸は高鳴った。キャベッジの入団が正式発表。23年に3Aで「トリプルスリー」を達成し、27歳で同学年の外野手―。ライバルが輪郭を帯びるほど、闘争心がメラメラと燃え上がった。
「実績のある選手とまた競争ができるっていうだけで巨人に来られてよかった。それでこそジャイアンツというのは、楽天にいた時から思っていたことなので。そこでまた争いに勝てればレベルアップできると思いますし、すごくワクワクします」。
今季は開幕2軍スタートも、自己最多の68試合に出場。9月7日のDeNA戦(東京D)は延長12回2死からプロ初のサヨナラ弾を放つなど、優勝争いの渦中で存在感を発揮した。「戦力になれなかったら、他のチームに比べてすぐ(戦力外)ですよとは思っていた。今はそういう気持ちで常にプレーしている」。昨季の1軍出場は8月9日が最後。背水の覚悟で臨んだ巨人加入2年目に、結果で居場所をつかんだ。
「どん底」だった過去もあった。体育館で行われたトークショー。「中学では大変な思いが多かった」と切り出し、2年時に股関節の動きに障害が出る「大腿骨頭すべり症」を患ったことを明かした。15センチのスクリューを2本、股関節に入れるなど2度の大手術を経験。学校に行くこともままならず約1年間、バットを握ることができなかった。
同級生の励ましを受け、中学2年の3月にボール拾いから野球を再開。関東第一時代に甲子園で躍動したことがクローズアップされがちだが「中学校の時は何もかもうまくいってない時期だった。うまくいっていない子たちに今日は何か届けばいいなと」と後輩たちに優しいまなざしを向けた。
数々の逆境をはねのけてきた背番号50。15年の楽天入団会見で掲げた大志は変わっていない。「メジャーに行きたいっていう夢はあります。ビッグマウスと言われましたけど。それに(向けて)走っていくのはモチベーションにもつながりますし、最終的に届かなくても悔いはない」。熱い思いが、定位置確保を目指す来季への原動力になる。(内田 拓希)
■マー君の200勝援護します 〇…オコエが巨人入りする田中将への援護射撃を誓った。楽天時代の22年以来、3年ぶりの共闘となる。通算200勝まで残り3勝に迫る先輩の加入に「またプレーできるのを光栄に思います。貢献できるように自分も頑張りたい」と決意を新たにした。巨人ではオコエが2年“先輩”となるが「お願いしますという感じです」と頭を下げた。