第101回箱根駅伝(来年1月2、3日)に8年連続98回目の出場となる中大が18日、東京・多摩キャンパスで壮行会と記者会見を行った。前回はチームで感染症が流行し13位だったが、今回はシード権獲得を目指す。引っ張るのは2~3月の米国・武者修行で意識を変え、心身ともに成長した溜池一太(3年)。藤原正和監督(43)も2区起用を示唆するエースが力強い走りで、伝統校を飛躍させる。
溜池が大きくなって箱根路に戻ってくる。1年時に1区4位と好走したが、大会前にチームで感染症が流行した2年時は、自身も体調が万全でなく同区19位。チームも13位でシード権を逃した。リベンジに燃える今大会を前に「チームのエースは自分。しっかりエースの走りがしたい」と自覚十分の言葉を口にした。
自信の源は、米国での武者修行にある。強化の一環で2月中旬からの1か月、現地の選手と練習をともにした。驚きの連続だった。「速い」と感じるペースでも淡々とこなすトップ選手たち。5000メートル米国記録保持者のグラント・フィッシャーが自身2番目となる12分51秒84の快記録をたたき出すところも目の当たりにした。
「海外の選手たちと戦いたい。もっと強くなるしかない」
闘志に火がついた。1回のジョギングで16キロ走っていた米国人ランナーを見習い、帰国後も毎日継続。月間の走行距離は200キロほど増えて平均約900キロになった。藤原監督は「ガラッと変わりました。ポテンシャルが高かった中でより努力し始めたので、一気に伸びた」と目を見張る。1万メートルは5月の関東インカレ4位入賞、7月は中大勢初の27分台となる27分52秒38。結果もついてきた。
8月の夏合宿には月1000キロに到達したが、ハイペースがたたり、右の仙骨(脊椎の一部)を痛めて10月の箱根駅伝予選会の欠場を余儀なくされた。「21歳の今の体で1000キロ走ってしまうとけがをしてしまう」。今の限界ラインを見つけ、調整を続けて11月3日の全日本大学駅伝は1区で出場。今月の千葉・富津合宿もこなし「焦らずトレーニングとジョグを見直し、やっと前季の走りに戻ってきた」と仕上がった。
箱根駅伝の希望区間は初の2区。「他大のエースと競り合ってチームに貢献したい。区間賞が取りたいですし、区間新記録も狙いたい」。その先にある目標も高く、武者修行でともに汗を流したランナーたちと国際舞台で張り合うこと。「五輪や世界陸上に出ないと一緒に走れない。1回でも多くそういう大会に出たい」。米国行きを機に心身ともに成長し、視線も上がった溜池。力を証明するリベンジレースがすぐそこまで迫っている。(手島 莉子)
◆溜池 一太(ためいけ・いった)2003年9月23日、滋賀・野洲市生まれ。21歳。滋賀・野洲北中から京都・洛南高に進み、全国高校駅伝は2年時に7区4位。中大の文学部に進み、箱根駅伝は2年連続1区出走。自己ベストは5000メートルが13分28秒29、1万メートルが27分52秒38、ハーフマラソンが1時間3分18秒。178センチ、60キロ。
◆中大 1920年創部。箱根駅伝は20、24、2017年の3回を除いて出場。総合優勝14回、6連覇(1959~64年)、出場98回、連続出場87回はいずれも大会最多。出雲駅伝の最高は92、96、05年の2位。全日本大学駅伝の最高は93、95、05年の2位。長距離部員は選手41人、学生スタッフ12人。練習拠点は八王子市。タスキの色は赤。主なOBはシドニー五輪マラソン代表の佐藤信之(前亜大監督)、ロンドン五輪マラソン代表の山本亮(現中大コーチ)。