新日本プロレスのIWGP世界ヘビー級王者・ザック・セイバーJr.がこのほど、スポーツ報知の取材に応じ、来年1・4、1・5東京ドーム2連戦への思いを激白した。
今年は、8月に真夏の最強決定戦「G1クライマックス」で初優勝。史上2人目の外国人として制覇する偉業を達成した。そして10月に内藤哲也を破りIWGP世界王座を初奪取。2度の防衛に成功し1・4東京ドームのメインイベントで海野翔太の挑戦を受ける。さらに1・5ドームでは、AEWのリコシェと対戦する。「G1」制覇、IWGP奪取、そして初のドームでのメイン…これまでの夢を一気につかんだ英国出身の37歳。プロレス人生最大の2連戦を目前に控え、プロレス哲学、海野への思いなど赤裸々に告白した。スポーツ報知ではプロレス界のトップに立つザックの言葉を3回に渡り連載する。1回目は「小川良成から受けた影響」。
8・18両国国技館。「G1」優勝決定トーナメント決勝戦。辻陽太を破り初優勝を飾ったリング上でザックは、プロレスリング・ノアへ参戦していた時代に指導を受け、今夏に引退を決断した師匠の小川良成へ「オガワセンパイ、プロレス人生お疲れ様でした!」と感謝の言葉を送った。インタビューでは、まず小川からどんな影響を受けたのかを聞いた。
「その答えを話す前に、まず前提として僕は、これまでの人生でいろんな人から影響を受け、サポートを受けてきたので、彼の名前だけを言って何か他の方たちと差があるとは捉えてほしくない」
こう丁寧に切り出すと2011年7月からのノアへの本格参戦で指導を仰いだ小川は「ただ、確かにその影響を受けてきた方々の中でも大切な方でした」と口を開いた。
「小川さんは、僕に追加…足してくれた方です。12、13歳の子供のころから日本のプロレスが好きで特に全日本プロレスの90年代が大好きで出会う前から小川さんは特別だと思っていました。出会う前から彼に対するイメージを持っていました。そして、実際にお会いする前に(同じ英国人レスラーで)トラディショナルなUKスタイルのダグ・ウィリアムスがノアにいて、彼も小川さんが好きでした。彼と小川さんの話をした時に『人として賢い人』と教えてくれました。そして、僕がノアに参戦した時、すぐに小川さんがリングへ呼んでくれて、ブリティッシュレスリングの練習をしました。この時、内心『試されている』っていうふうに思いました。恐らく、小川さんは僕がブリティッシュスタイルのレスラーかどうかを見ていたと思います」
小川の指導で「追加」されたものとは何か?
「いっぱいあります。その中でも憧れて尊敬していることは、小川さんは、すべての試合でひとつひとつ違いを見せるんです。いわば、ひとつひとつの試合に重要性を持たせる。例えばロックバンドでライブのセットリストがあるとして、全部のツアーで同じ曲を歌う人がいると思います。でも小川さんは小橋(建太)さんと戦う時、金丸(義信)さん、丸藤(正道)さんと戦う時、全部が違います。もちろん、彼自身は同じなんですが試合の状況が違えば、違うものを見せられる人なんです。例えば、メインストリームがあって、多くの人はこれをやるみたいな先入観があるとすれば、小川さんは違うことをやるんです」
そして「違いを見せた」印象的な一戦を明かした。
「GHCヘビー級のベルトを初めて奪取した時(2002年4月7日、有明コロシアム)、小川さんは秋山さんに4分で勝った。しかもテクニックだけで!レスリングって勝つことが目標なんだけど、多くのレスラーはファンに何かを与えようと思って戦っています。ところがあの秋山さんとの試合で彼は、勝つことに固執してヘビー級王座を取ることだけを考えてあの試合をやりました。それは彼しかできないことだった。彼には方程式がないんです。オーソドックスな基礎、基本のテクニックをしっかり近代のやり方にあてて使える人。例えばヘッドロックのようなプロレスラーが最初に学ぶテクニックで何試合も勝っている。その技でタイトルマッチを制覇するってどうなの?と驚きを与えます。そこはエキサイティングな要素。大きな影響を受けました」
近代とはどういう意味なのだろうか?
「プロレスのテクニックで3、40年前は使われていても今は、それほど使われていない技術があります。それは、格闘技もそうじゃないですか。例えば(1997年にスタートした格闘技イベントの)『PRIDE.1』のテクニックは今のUFCにはありません。サッカーもそうです。かつては(試合前に)たばこを吸ってプレーしている人もいたが今はいない。プロレスもそれと同じで過去と今では全然違うと思う。その変化を繰り返しが近代になり、その進化の過程でなくなってしまったテクニックもあると思う。ただ、伝統的なものはなくし過ぎてはいけないと思っています。小川さんは、伝統と近代を融合できた。そこが興味深いと思ったポイントです」
小川から「追加」されたポイントを熱心に説いた。そして、自身のスタイルに言及した。
「僕が成功できた要因のひとつは、もともと古き良きUKスタイルがあったからだと思っています。さらに古き良き日本のスタイルも持っています。今、このふたつを融合できるレスラーはいないと思う。ただ、自分の試合を『これって80年代かよ』と言う目線では見て欲しくない。だってザック・セイバーJr.は2024年、そして2025年も違う。今、37歳。毎年、スタイルは進化している。引き続きその動きは止まらないし、いつもトライ&エラーだし、ピークを迎えて上を目指す人はいると思うけど自分のピークはないかなって思う。なぜならば、人って調整を加えれば戦い続けることができるはずなんだ。レスラーの中には年齢を重ねると体が劣化する人もいる。でも、僕のスタイルは体の変化と共にさらに進化するんだ」
(福留 崇広)
◆1・4東京ドーム全対戦カード
▼IWGP世界ヘビー級選手権 60分1本勝負
王者・ザック・セイバーJr. vs 挑戦者・海野翔太
▼スペシャルシングルマッチ 30分1本勝負
内藤哲也 vs 高橋ヒロム
▼IWGP GLOBALヘビー級選手権 60分1本勝負
王者・デビッド・フィンレー vs 挑戦者・辻陽太
▼IWGPジュニアヘビー級選手権 60分1本勝負
王者・DOUKI vs 挑戦者・エル・デスペラード
▼NEVER無差別級選手権
王者・鷹木信悟 vs 挑戦者・KONOSUKE TAKESHITA
▼棚橋弘至ファイナルロード・ランバージャックデスマッチ
棚橋弘至 vs EVIL
▼NJPW WORLD認定TV選手権3WAYマッチ
王者・成田蓮 vs 挑戦者・ジェフ・コブ、大岩陵平
▼IWGP女子選手権 60分1本勝負
王者・岩谷麻優 vs 挑戦者・AZM
▼IWGPジュニアタッグ選手権4WAYマッチ
王者組・KUSHIDA、ケビン・ナイト vs ロビー・イーグルス&藤田晃生、TJP&フランシスコ・アキラ、クラーク・コナーズ&ドリラ・モロニー