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根矢涼香「今が転機」 ドラマ「極悪女王」デビル雅美役を好演「マイナスもプラスも、背負って表現できる」

スポーツ報知 2024年12月23日 11時0分

 1980年代の女子プロレスブームを描いたNetflixドラマ「極悪女王」(全5話)が大ヒットを記録している。主人公のダンプ松本(ゆりやんレトリィバァ)をヒールとして鍛え上げたのが、悪役レスラーのデビル雅美。この役を好演した女優の根矢涼香(30)が取材に応じ、今作が自身に与えた影響を告白。役作りに懸ける思い、肉体改造時の苦労などを語った。(加茂 伸太郎)

 画面越しの姿とは打って変わって、スタイリッシュで笑顔がとってもチャーミングだ。9月の配信開始から3か月が過ぎた。

 日に日に広がる反響に、根矢は「うれしさと同時に、私たちだけで感じていた『青春』が旅立っていったような寂しさも少しあります」と吐露。「今は(出演者の)みんなが、新しい方向に向かって歩き始めている。私も個人的な思い出、感情とお別れして、次はどの道に進んでいこうかなという気持ちです」と前を向いた。

 今作は鈴木おさむ氏が企画・脚本・プロデュース。映画「孤狼の血」の白石和彌氏が総監督を務めた。カリスマ的人気で女子プロレス旋風を巻き起こしたダンプ松本。正統派に憧れながらも悪役に転身、「全国民の敵」と呼ばれるほどの“最恐ヒール”にまで成り上がった彼女の知られざる半生が描かれている。

 根矢はオーディションに合格し、デビル雅美役を射止めた。デビルはレジェンドのヒール、圧倒的な存在感を放った女帝。デビル軍団を率い、ダンプに悪役の極意をたたき込むが、試合中に謀反を起こされる。

 実在する人物を演じたのは初めて。「自分で大丈夫かな? これまで以上に責任感を感じました」。映像を見てファイトスタイルを研究。国立国会図書館で雑誌のインタビュー記事を読みあさり、人となりを理解しようと努めた。

 「本人が語るデビルさん像と、他者が語るデビルさん像がかけ離れていたんです。端から見ると怖いイメージだけど、面倒見が良くてステキな先輩。料理上手で、控室で編み物をしていたり、繊細で家庭的な一面もあったみたいです。私が感じたデビルさんの印象は、プロ意識の塊のような方。たくさんのデビルさん像を集めて、自分なりに『こういう人かな』と想像しながら役を作っていきました」

 プロレスシーンはデビルのまな弟子で、作品のプロレス監修を担当した長与千種(60)から直々に指導を受けた。「当時を間近で見ていた長与さんが、実際に演じてくださって。戦い方や人物像も教えてくれて。ぜいたくな時間でした。戦うのは相手役だけど、自分自身の人生と闘っているような感覚がありました」

 役作りのため、肉体改造にも着手した。専門医や栄養士からアドバイスをもらい、計画的に増量。半年間で体重を13キロ増やした。

 「プロレス練習の後に、みんなで牛タン屋さんに行ってご飯の大盛りを頼むんです。1人で食べるとしんどいけど、みんなで食べると食が進む。年に1回しかラーメンを食べないようにしていたけど、『やった~! 解禁だ~!』って(笑)。女の子同士が『いいおなかだね』『いいお尻だね』って褒め合う姿は、何だか美しいなって思いました」

 目標体重に届かず、悔しい思いもしたが「撮影部さんがうまく撮ってくれました」と感謝。「映像で大きく見せられるように、トレーナーさんも肩回りだけを大きくするトレーニングを教えてくれた。自重トレーニングの懸垂ができるまでに(筋力が増えて)肩がパンパンになりました」

 うれしい出来事もあった。撮影の中断期間を利用し、デビルが生まれ育った福岡・北九州市の空気を吸おうと現地を訪問。その足で、長与が代表の女子プロレス団体「Marvelous」博多大会をのぞくと、デビルとの対面がかなった。

 「本当に偶然。奇跡でした。デビルさんは負けた時以上に、つまらない試合をした時の方が悔しくて泣いてしまったと。(勝ち負けより)試合内容や対戦相手とのバランスを最重視された方。映画も主役だけじゃ成り立たない。独りよがりじゃ作れないので(デビルさんから)学ばせてもらう部分が多かったです」

 根矢は小学5年の時に見たミュージカルに感動し、芝居に興味を持った。中学1年時にオーディションに合格し、国民文化祭プレ公演「森は生きている」で初舞台。高校卒業後に上京し、舞台やミュージカルを志す中、映像の世界へと進んだ。「どういう役が合うか分からない。たくさんの作品に出よう」と決めて、映画「根矢涼香、映画監督になる。」など、これまでインディーズ映画を中心に40本以上に出演した。

 今年は米エミー賞18部門受賞のディズニープラスのドラマ「SHOGUN 将軍」(真田広之主演)に、映画「少女逅」で共演した穂志もえか(29)、演技レッスンが同じだった金井浩人(32)が出演。同世代が活躍する姿に「私も頑張らなくちゃ!」と刺激をもらい、自らを奮い立たせた。

 自身も20代の締めくくりで巡りあった「極悪女王」。根矢は「間違いなく、今が転機だと思います」とはっきりと言った。「マイナスな自分もプラスな自分も、今ならどっちも背負って表現ができる。過去の悔しさを忘れずに、ここから踏み出していくぞ!という気持ちです。自分の中の覚悟、これだけやり尽くしてもまだやり足りない、という感情があるということも分かった。『極悪女王』から始まるご縁が、どこにつながっていくのか楽しみです」

 視線の先には、無限の可能性が広がっている。

根矢涼香(ねや・りょうか)

▼生年月日 1994年9月5日、30歳

▼出身 茨城・東茨城郡茨城町

▼出身大学 立大現代心理学部映像身体学科卒

▼身長 158センチ

▼特技 歌、絵画、上段回し蹴り、茨城弁

▼趣味 空手、古本屋巡り、フィルムカメラ(映画「水深ゼロメートルから」「少女逅」のポスターのスチールを担当)

▼資格 第59回NHK杯高校放送コンテスト朗読部門の茨城県大会1位、県知事賞受賞(高校3年時)

▼待機作 来年1月25日、2月23日に朗読と歌を組み合わせたライブ(東京・世田谷Space Orbit)を開催

◆目標は故郷・茨城での映画撮影

 〇…根矢は「いつになるかは分からないけど、生まれた町(茨城・茨城町)で映画を撮りたいという目標があります」と語った。石井裕也監督の商業映画デビュー作「川の底からこんにちは」(10年)を見たことがきっかけ。「自分の暮らす町で撮影していたんです。地元って地味だと思っていたけど、映画になるんだって(気付かせてくれた)。生まれた町で映画に挑戦したい」と目を輝かせた。

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