阪神・佐藤輝明内野手(25)が23日、契約更改交渉の席上でラッキーゾーンの復活を切望した。「毎年だけど、つけてほしいと真面目に」要望。「前向きに考えてくれているんじゃないですか」と期待したが、球団側は即座に却下した。嶌村球団本部長は「左中間が広く、そこを外野が駆ける。(ファンにも)定着している。今のままで行かせていただく」と完全否定した。
甲子園では今季4本塁打。右翼から左翼にかけて吹く浜風に飛球が押し戻されてフェンス手前で捕球される場面もあり、主砲は「バッターからしたら大きな違い」と主張した。自身初の30本塁打超えも可能になるかとの問いに「行くんじゃないか」と即答。「つけさせてもらえるのなら」と自費での設置案までぶち上げたが、思いは実らなかった。
同じ日本人の左打者では、金本知憲がラッキーゾーン撤去後の05年にシーズン40本塁打を放った。嶌村本部長は佐藤輝にも「それだけのパワーがある」と期待。「球場に合わせてもうちょっとこっち(左翼)に打ったらええ」と、浜風を味方につける打撃を願った。
この日は兵庫・西宮市内の球団事務所で大トリ交渉に臨み、現状維持の1億5000万円で更改。来季の1億円プレーヤーは球団最多更新の11人となったが、佐藤輝に笑顔はなかった。打率2割6分8厘、70打点に自己ワーストの16本塁打で、5月中旬には2軍落ちも経験。「フォームを見直して。打球に角度を付けられるように」と来季へのテーマは明確だ。目標は3割、30本、100打点。浜風も切り裂く、正真正銘のアーチを量産する。(直川 響)
◆ラッキーゾーン 外野フェンス手前に柵を設置して造られたホームランエリア。1947年5月26日に誕生した。設置前は両翼110メートル、左中間と右中間は120メートル以上だったが、両翼91メートルに短縮された。試合数の微増もあったが、47年17本のチーム本塁打は48年50本、49年141本へと激増。一方で91年シーズン終了後に撤去されると、同年の111本から92年86本へと急減した。野球の国際化による球場基準の見直し、選手の体格や技術の向上、高校野球の金属バット導入などが撤去の理由だった。
〇…佐藤輝は将来的なポスティングシステムによるメジャー挑戦も球団に直訴した。「まだ話し合いというところ」と詳細な言及は避けたが、同システムを利用しての挑戦願望かとの問いに「そうですね」と即答。かねて抱く夢を初めて伝えた。嶌村本部長は「出てくる気持ちを止める権利はない」と思いを尊重した上で、「チームを預かる身としてチーム編成や他の選手というところを総合的に判断する」と語るにとどめた。