鹿島は鬼木達氏を新監督に迎え、新シーズンを迎える。「鬼木アントラーズ」はどんなチームになるのか。かつて鬼木監督率いる川崎を担当していた記者が、新生・鹿島を展望する。第1回は【選手起用編〈1〉】としてFWとMFを取り上げる。
* * *
▽ストライカー
川崎時代同様、鹿島でも4―3―3あるいは4―2―3―1を採用することになるだろう。いずれにしろ、センターFWは1枠だ。
2連覇を果たした20~21年の黄金期において、レアンドロダミアンの存在感は際立っていた。ダミアンの稼働状況とチーム成績は、密接に絡み合っていた。
編成作業のあれこれを聞く限り、レオセアラ(C大阪)が“ダミアン役”の筆頭だろう。鈴木優磨も当然候補だが、オプション起用になりそうだ(後述)。ポストプレーが持ち味ではない山田新や宮代大聖にも、指揮官は最低限の「下がって受ける」を求めた。田川亨介も、ここは避けて通れない。師岡柊生は決定力、徳田誉はポストプレーの精度が“鬼木式1トップ”の基準を満たしていない。成長とアピールが必要だ。
▽ウィング(サイドハーフ)
「起点型」「推進型」の2枚を左右に組み合わせることが多かった。家長昭博と三笘薫、家長とマルシーニョ、等々。同タイプの同時起用には消極的だった。
小林悠、知念慶(今は昔、FWだった頃)のウィング起用もあったことから、鈴木優磨や師岡のサイド起用も選択肢に入るだろう。
ウィングに関しては、守備面のマイナス要素も多少は目をつむる傾向にあった。ポポヴィッチ氏の要求に手一杯だったチャブリッチと松村優太は(来季プレーできるとすれば)「推進型」としてチャンス到来かもしれない。
▽中盤
トップ下を置くか、あるいはアンカーを置くか。理想は4―3―3の逆三角形だろうが、これを採用するには相応の編成、そして月日が必要だ(今季の川崎も途中で頓挫した)。現実的にはトップ下配置が有力か。
川崎では、技術に秀でた大島僚太をアンカーに置き、守備力ピカイチの橘田健人をインサイドハーフに置いた時期もあった。この発想で言えば柴崎岳はアンカー、知念慶はインサイドハーフも可能だ。3枠の配置と組み合わせは、様々なテストを行った上で最適解を見つけていくことになるだろう。
汗かき役ができる遠野大弥は、目立たないながら直近3季連続で30戦以上に出場するなど重宝されていた。この役目は樋口雄太が担えるか。ボールを運ぶという意味では、師岡の起用も面白そうだ。
そして「トップ下・鈴木優磨」も十分に考えられる選択肢だ。こちらが得られる情報を総合すると、ここに40番が入ることが想定されていると考えれば、いろいろと辻褄が合う。鬼木監督が中村憲剛、脇坂泰斗に任せていたポジションに鈴木優磨が入るとなれば、大きなサプライズとなる。
* * *
今季19得点でブレイクした大卒2年目の川崎FW山田新だが、1年目は起用が限られた。
その背景には、セットプレーのストーンが苦手という理由があったと聞く(実際に失点に絡む試合があり、次の試合でベンチからも外された)。「当たり前」ができない選手は使われない。
強化部が一念発起して獲得した選手でも、例えば強度が足りなかったチャナティップ、運動量に限界があったゴミスは起用が限られた。飛び抜けた長所があっても、短所がチームパフォーマンスに影響を及ぼすと考えれば、スパッと使わない。始動~開幕までの約1か月間、鬼木監督の目は鋭く光り続けるだろう。新指揮官の判断や、いかに。(第2回につづく=鹿島担当・岡島 智哉)