広島の投手陣で一番、飛躍の可能性を秘めているのが、今季“年男”の左腕・玉村昇悟投手だ。秋季キャンプを終えた新井監督が「実戦を多くやった中で、常広と玉村の2人は頭ひとつ抜けている感はある」と、23年ドラ1と並べて珍しく名前を挙げて評価。期待のほどがうかがえる。
プロ5年間で、20歳シーズンだった21年と昨季の4勝が最多だ。目立った成績は残せていないものの、昨季は7月30日のDeNA戦(マツダ)でプロ初完投。2軍を通じて初めて9回を投げ抜くと、8月12日の同カードでも3失点完投。2戦連続完投は、球団日本人左腕で高橋建(2軍投手コーチ)以来、21年ぶりだった。9月1日のヤクルト戦(マツダ)では、無失点で迎えた9回無死で降板(8回1失点)。「今まで想像したくてもできなかったものが、見えた」と、今季の現実的な目標としてプロ初完封を見据える。
オフには“先発4本柱”の一人、九里が海外FA権を行使してオリックスに移籍した。「競争が生まれる。椅子が一つ空いた。どんどん奪い合ってほしい」と、新井監督。外国人の入れ替えはあったが、実質的に“補強ゼロ”だったチームの巻き返しに、若手の台頭以外に道はない。
21年に球団の高卒2年目で前田健太(タイガース)以来のシーズン100投球回突破した左腕。「亜蓮さんが抜けてチャンス」という思いは、誰しも同じ。「ここでグッといかないと、もうチャンスはなかなかやってこないのかなと思っている。焦るということではないけど、しっかりやりたい」と、6年目は勝負の一年となる。(広島担当・畑中 祐司)
◆玉村 昇悟(たまむら・しょうご)2001年4月16日、福井・越前町生まれ。23歳。丹生高では1年春からベンチ入り。3年夏に福井大会で5試合52奪三振の新記録をマーク。19年ドラフト6位で広島入り。通算50登板で13勝15敗、防御率3・79。179センチ、85キロ。左投左打。今季年俸2600万円(推定)。