第101回箱根駅伝(来年1月2、3日)で優勝10度の日体大は、10月の箱根予選会4位で突破し、初出場からでは最多となる77年連続77回目の出場を果たした。4年連続出場を目指す分須(わけす)尊紀主将(4年)は、重圧を力に変えて伝統を次学年につないだ。日体大OBで91年東京世界陸上男子マラソン金メダルの谷口浩美氏(64)から、金言を授かって成長。復路希望の22歳は、7年ぶりのシード権(10位以内)獲得でOBへの恩返しを思い描く。
分須は4度目の箱根路を伝統校の主将として迎える。予選会はチーム5番手の個人81位で、連続出場記録を「77」まで伸ばす原動力となった。「先輩方が残した数字を途切れさせてはいけない。そこは伝統の重みもあるが、大きな自信にはなっている」。重圧がある反面、つないできた数字が大きな後ろ盾にもなったという。
憧れのOBの“金言”が支えとなってきた。箱根6区で3年連続区間賞の「山下りのスペシャリスト」谷口氏だ。初対面は分須が1年時の2月。宮崎合宿で話を聞き「箱根とか大きな大会は100日前から全練習のメニューを考えて、大会まで臨むことを徹底されていた。普通の人じゃ思いつかないことを考えていた」と感銘を受けた。今年も8月に長野・菅平高原で行った合宿で指導を受け「上級生がしっかりしていた」などの助言を授かり、「昔も今も変わらない。勝てるチームを先頭に立ってつくっていきたい」と、襟を正してチームをまとめてきた。
最後の箱根を前にうれしい出来事もあった。長年、推している歌手の西野カナ(35)が6月、約5年半ぶりに活動を再開した。一番好きな曲は「『Have a nice day』。がんばろうっていう歌詞が好き。今でも元気づけられる。走る前にも結構聴く」と背中を押されている。11月の活動再開後初ライブは、抽選で外れてチケットが手に入らず。それでも「ライブがあることも、自分の頑張りになっている」と箱根後の大目標に見据えている。
3年連続で箱根路を走り、前回は8区2位と好走した。「自分でペースを刻みながら走るのが得意」と今回も復路の7、8区を希望。憧れの谷口氏は4年時には区間賞で優勝も果たした。「シード権を取って、卒業されていった先輩にも喜んでもらいたい」と分須。伝統校の主将がシード奪還のゴールテープを切り、OBに最高の恩返しをする。(富張 萌黄)
◆分須 尊紀(わけす・たかのり)2002年10月4日、埼玉・美里町生まれ。22歳。美里中3年時に全日本中学校陸上選手権で1500メートル3位。18年、東農大二高に進学。21年、日体大体育学部に入学。箱根駅伝は1年時4区15位、2年時4区20位、3年時8区2位。自己記録は1万メートル28分49秒01、5000メートル13分53秒44、ハーフマラソン1時間4分12秒。「分須」姓は珍しい名字で「家族と親戚以外は会ったことない」と笑う。168センチ、52キロ。
◆日体大 1926年創部。箱根駅伝には49年に前身の日本体育専門学校が初出場。以来、77回連続出場中。優勝10回。全日本大学駅伝は優勝11回。出雲駅伝は最高2位(2010年)。学生3大駅伝通算21勝は駒大に続く2位。長距離部員は選手59人。学生スタッフ12人。練習拠点は神奈川・横浜市。タスキの色は白。主なOBは1972年ミュンヘン五輪マラソン代表の采谷義秋氏、91年東京世界陸上マラソン金メダルの谷口浩美氏。