死者489人、行方不明者2人、負傷者1379人の被害(いずれも消防庁・12月24日発表)を出した能登半島地震発生からまもなく1年を迎える。能登・輪島の象徴「輪島朝市」。軒を連ねていた本町通りは約240棟、約4万9000平方メートルが焼けたが、復活の兆しを見せようとしている。近隣の商業施設で臨時店舗を再開するかたわら「出張輪島朝市」と称して各地で出店を展開。県内外計90か所で臨時店舗を開き、売り上げは震災前の水準とほぼ変わらなくなった。苦しみもうれしさもあった輪島朝市の1年を聞いた。(樋口 智城)
奥能登豪雨被害で犠牲になった喜三翼音さんの父・鷹也さん(42)は、亡くなった娘の代わりに出張朝市を手伝っている。「娘のため、とかじゃないです。ただ輪島の家が流されてやることないから」とぽつり。「今は金沢にいますが、輪島に帰ることはないと思います。家を建て直すことは可能ですが、あそこが危険であることは娘が教えてくれました」
能登半島地震で被災した石川県の155人を対象に共同通信が今月実施したアンケートで、復旧や復興が進んでいないと答えた人が63%だった。地震発生からまもなく1年となるが、生活再建が遠い現状や、被災地への関心低下に対する懸念が浮き彫りになった。金沢市内の輪島朝市直売所で働く小坂美恵子さん(66)は「輪島はもう地形も風景も変わってしまった。生まれてからずっと住んできた土地なのに、帰ってもあまり故郷とは思えんのですよ」と正直に打ち明ける。
「輪島朝市」があった本町通りについて、地元住民らが復興計画を議論する協議会の初回が21日に開かれた。公費解体が進められているが、その後の再建案は定まっていない。まず誰の家がどこにあったかなどを測量して、区画整理して…と考慮に入れると、最低4~5年かかると見積もられている。
壊滅的被害を受けた七尾市の和倉温泉では、21軒のうち4軒しか営業再開ができていない。護岸工事は年内に着工。年明けから順次、建物の解体作業や補修工事が始まるのだという。