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錦織圭復活「誰とでも、ある程度戦える。昔に戻った感じ」けが乗り越え、シナーやアルカラスらと「真っ向勝負」

スポーツ報知 2024年12月28日 5時0分

 男子テニスの元世界ランキング4位、現同106位の錦織圭(34)=ユニクロ=がこのほどスポーツ報知の単独インタビューに応じた。29日に35歳となり、迎える2025年、世界王者のヤニク・シナー(23)=イタリア=、4大大会4勝のカルロス・アルカラス(21)=スペイン=ら新世代のトップ選手に真っ向勝負することを誓った。30日から始まるATPツアーの香港オープンでシーズンが幕を開け、来年1月12日開幕の全豪オープンで復活した姿を見せる。(取材&構成=吉松忠弘)

 けがや引退の話ではなく、錦織の口から、久しぶりにテニスの話があふれ出した。

 「やっとスタート地点に戻ってきた感じだ。誰とでも、ある程度、戦えるところに戻ってこられた。この調子でいけば、(ランキングは100位以内に)すぐに上がるだろう。この2、3年に比べたら、いい位置にいる」

 25年は、世界ランキングを上昇させる過程で、4大大会やツアーの予選、ときにはツアー下部のチャレンジャー大会に出る必要性にも迫られる。

 「今は、全くいとわない。いいチャレンジになる。昔に戻った感じ。半年や1年後も、ずっとそれを続けていたら話は違うが、今はまだ新しいチャレンジだととらえている」

 25年にイメージするのは、世界王者シナー、そしてナダルの後継者アルカラスら新世代との戦い方だ。特に、両者と対戦がないだけに、試合のイメージが自分の中でふくらむ。

 「こいつらと戦うには真っ向勝負しかないと(思った)。昨年までは、スライス(逆回転)や高い球とかで逃げて、のらりくらりかわしながらでも、こいつらを倒せるのかとも思っていた。どうしようかと、すごく考えた。でも、やはり真っ向勝負だと。そのためには、フォアを打たないといけないという結果になって、夏ぐらいから、かなり打つ意識はしている」

 きっかけは、9月の木下グループ・ジャパン・オープン準々決勝、10月のエルステバンク・オープン(ウィーン)1回戦の2大会だった。

 「ジャパン・オープンの時が、今年、プレーの内容として一番良くて。ウィーンも良かった。でも、これだけ良くてもジャパン・オープンで(シナーと同世代の)ルネ(21歳、デンマーク)、ウィーンでドレーパー(23歳、英国)に負けた。若い選手たちが、どれだけ球が速いかを肌で感じて、ちょっとやばいと。それで、打ち続けて真っ向勝負しかないと思った」

 錦織がフォアで真っ向勝負に挑めば、破壊力は抜群だ。しかし、身長178センチの小柄な体格で打ち続けることは、体力消耗や体への負荷も意味する。過去、それで何度もガス欠を経験し体が壊れた。それでも、真っ向勝負を増やしたいのは、シナーやアルカラスと対等に戦いたいからだ。

 「(2人は)別次元のラリーをしている。球の速さとか、ディフェンスなのに攻めているとか、何かおかしいですもんね(笑)。それを見ていると、やっぱり(対戦したときが)怖い。みんながいろいろ対戦して試しているけど、それでも突破してきている。(打って)真っ向勝負じゃないと、戦うのは難しい」

 シナーとは本格復帰前の4月に、モンテカルロで何度も練習した。5月の全仏直前にも会場で実戦形式の練習も積んだ。

 「練習はすごいしているけど、試合とは、たぶん全然違う。練習中はミスが多かったりするので。でも(試合中は)球も速いし、テンポも速いし、安定感もある。もちろん、安易なミスなどしない」

 右肩痛で課題だったサーブも、ようやく勝負できるところまで戻った。

 「本当に(右肩が)痛かった。今は痛みに対して単純に自信がついた。夏ぐらいから痛みは(ほとんど)出なくなった。おかげで、さらにサーブがないと勝てないというのを痛感した。セカンド(第2サーブ)になると(リターンで)たたかれる。ファースト(第1サーブ)がどのぐらい入るか。これがベーシック(基本)というぐらい、みんなのサーブが良くなってきている」

 目標を高く置いた。ツアー優勝も視野に入れる。状態面の問題が解消され、世界と勝負する態勢が整った。早ければ来年1月の全豪オープンで復活した姿が見られる。

 「次の目標は4大大会の2週目(=4回戦以降に残る)とか、250(ツアーの最も小規模の大会)の優勝とか。そして50位以内に入れると、またさらに気持ちも変わってくる。(まずは)そこら辺に、ちょっと食い込んでいけるとうれしい」

 ◆錦織 圭(にしこり・けい)1989年12月29日、松江市生まれ。34歳。5歳でテニスを始め、13歳で米国にテニス留学。08年2月に日本男子2人目のツアー優勝を遂げ、14年全米でアジア男子シングルス史上初の4大大会準優勝に輝いた。自己最高の世界ランキング4位はアジア男子過去最高位。16年リオ五輪男子シングルス銅メダルは、日本テニス96年ぶりのメダルの快挙。ツアー通算12勝。家族は妻・舞さんと2子。178センチ、74キロ。

 ■取材後記 立ち話の時だった。「しばいてみるのもいいかも」。久しぶりに聞いた錦織節だった。「しばく」とは、全力でショットを打ち抜くことだ。しかし、体への負荷が大きく、即効で仕留めないと後が苦しい。全盛期は「しばく」と止まらなくなり、体が壊れた。ただ、その破壊力は誰をも寄せ付けない。そのプレーを復活させようというのだから自信が戻ってきた証拠でもある。

 近年では珍しく年齢や引退、やめていった選手の話が全く出なかった。前を向き、またテニスをプレーすることに集中するだけ。誕生日を迎える35歳の年齢や、引退したナダルへのノスタルジーなど“どうでもいい”という空気を感じた。

 2人の子どもの父親となり、上の子は物心がつく年齢だ。ツアーへの帯同は「ノーではないが、大変なんで。あまり考えていない」。今はテニスができることに集中したい。

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