阪神・藤川球児監督(44)が27日、8月に「胸椎黄色じん帯骨化切除術」を受けた湯浅京己投手(25)が実力ではい上がってくることを待ち望んだ。23年WBC世界一メンバーで、クローザーとして期待された右腕はリハビリに励む日々。国指定の難病から再起をかける男の指揮官に対する感謝、来季への思いを阪神担当・直川響記者が「見た」。
さわやかな笑顔に戻っていた。12月に入り、湯浅を甲子園で見かけることが増えた。下半身が思い通り動かず、悩みに悩んでいた春先とは表情も一変。術後の経過は順調だという。ただ、リハビリ組は鳴尾浜球場で練習を行うのが通例。一体なぜ、甲子園に?
答えは指揮官の配慮にあった。けがとは異なり、ただでさえ繊細な難病からのリハビリ。寒さを心配した藤川監督の気づかいもあり、比較的温暖な甲子園の室内練習場でリハビリを行うことが可能となった。右腕は「本当にありがたかった」と感謝しきりだ。
現役選手ではDeNA・三嶋、中日・福、ロッテ・岩下が同様の手術を受け1年以内に1軍復帰を果たした。他球団だが「聞けば何でも優しく教えてくれる」という3人は心の支え。「勝手ですけど、来年は1軍で全員がやれたらいいな」。グラウンド上での再会はモチベーションの一つになった。
すでにブルペン投球も再開し、2月の春季キャンプでは完全合流できる見通し。「実戦や試合でどんどん投げていきたい」と2月中の実戦登板にも意欲を示す。「頑張っている姿を見せて、同じ病気の人を少しでも勇気づけられるように。色々な方に恩返しできるシーズンにしたい」。幾多の思いを胸に刻む22年最優秀中継ぎ投手。一言一言に覚悟と気概を感じた。(直川 響)
〇…藤川監督は元守護神の湯浅を特別扱いせず、実力でのカムバックを期待した。「私情を挟まない監督としての立場であれば、平等に見るしかない。彼の心意気、やる気、頑張りは見たいけど、それも全選手同じ。心に思うところはありますけど、ここ(囲み取材)ではお話できない」。右腕は来春キャンプでの全体練習合流を目指しており、結果を残して競争に加わってくることを求めた。