俳優の郭智博が、2025年1月1日付けで西村和泉(にしむら・いずみ)に改名することとなり、このほどスポーツ報知の取材に応じた。12歳から28年間「郭智博」名義で多くの作品に出演してきたが、新年からは新たな名前で心機一転、スタートを切る。
改名について、西村は「自分の中の選択肢を広げるため」と意図を明かす。28年間親しんだ「郭智博」の名を変えようと思ったきっかけは、昨年中国映画(日本公開は未定)の撮影に日本人役で参加したこと。「4年ほど前から中国語を勉強していて、中国映画にいつか出られたらいいという思いが初めて成立した。実際に参加してみて、すごく活気があったんですよね。みんなが声を出し合って熱を持ってものづくりをしていた。同じ目的に向かって進んで、うまくできたらたたえ合う。ものすごく刺激を受けましたし、何よりやりがいを感じました」
かねてアジア圏へのあこがれはあった。「10年前に日台合作の『南風』の台湾でのロケに参加したとき、現地のスタッフに『自分のルーツがあるのに、なぜ(言語を)話せないの?』と言われて。思ってもいない指摘だった。自分も年を重ねてきたので、何かを覚えるなら中国語がいいんじゃないかと…」と、語学を学び始めた。
19年公開の韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が国際的に高い評価を受けたことも背中を押した。「アジア圏からクオリティーの高い作品が出ている。日本の俳優さんがハリウッドに行くことはよくありますけど、性格的に人と同じことをやるのはしっくりこない。まだアジアの映画の現場はそこまで知られていないですし、面白そうと思いました」と、海外で活動する意欲がさらに高まったという。
そこで痛感したのが名前の必要性だった。もともと「郭」は、台湾にルーツがある父の姓。「『郭』は中国に結構ポピュラーな名前なので、オーディションで日本人の役を募集している場合に『郭智博』だと、日本人と思われずにはじかれてしまう。中国映画の現場でも、現地のキャスティングの方に『リストの段階ではじかれちゃうのはもったいない』とアドバイスを受けた。これまでも『変えていいかな』と思ったことはありましたが、明確な決め手はなかった。今回、中国での経験もありましたし、40歳になったタイミングもあって…」。所属事務所と相談し、改名の運びとなった。
「西村和泉」は、本名の「西村」姓に、「ちょっとしたひらめき、インスピレーション。響きや画数、字にしたときの並びも考えて決めた」という「和泉」をチョイスしたもの。すでに新たな名前で参加する作品も決まっているという。
大きな決断とともに迎える2025年。「変わらずマイぺースにやっていこうと思います」と自然体ではあるが「活動的には、日本だけではなくて、アジアの方にも目を向けて、足を伸ばせていけたら」と話す。「2025年はその土台作りをする大事な年にしていきたいなと思いますね。あと僕なんかが言うのもおこがましいですが、日本映画に育ててもらったので、アジア圏のレベルの高い映画作りを日本にも持ち帰ることができるように精進していきたいです」。西村和泉として歩む初日が幕を開けた。(宮路美穂)