落語家4人目の人間国宝(重要無形文化財保持者)で、昨年9月に出身地の東京・墨田区から名誉区民に選定された五街道雲助(76)の名誉区民顕彰式が6日、区役所隣接の「すみだリバーサイドホール」で行われた。
* * * * *
墨田区の名誉区民は、ソフトバンク・王貞治会長(84)と押絵羽子板職人の故・西山幸一郎氏に次ぐ3人目。受賞スピーチで師匠は「身に余る光栄でございます」と第一声。墨田区で生まれ育ち、区外に一度も転居したことがないだけに「こんなうれしいことはない。すみだに思い入れのあったオヤジも生きていたら大変に喜んでくれたろうと」と話し、昨年末にお墓参りに行った際のエピソードを紹介。「(墓前報告で)オヤジも喜んでくれたのか、墓石がゴトゴト~っと動いた!…ような気がした」と話し、会場を沸かした。
名誉区民の選定は、昨年9月の区議会本会議において全会一致で決まった。「江戸の古典落語を高度に体現し、長年の研鑽(けんさん)に基づく卓越した技量を数多くの高座で示し、落語界の第一人者として後進の指導や育成にも尽力される姿は、広く区民が敬愛し誇りとするところ」が選ばれる理由になった。
「(墨田区名誉区民の)一番初めが世界の王。国民栄誉賞のその人と同列になるのはおこがましいし、申し訳ない。ただ、考えてみると、王さんは落語ができない。やったとしても、私よりは…。少しは誇っていいのかな」と控えめに話した師匠。「これを機に、多くの人に、すみだはそんなに落語の盛んなところ、となってくれたら本望」とスピーチを締めくくり、最後には約380人の出席者を前に古典落語の演目の1つ「八五郎出世(はちごろうしゅっせ)」を披露し、太い声と軽妙な口調で聴衆を魅了した。
この日の名誉区民顕彰式は区の新年祝賀式とともに行われ、山本亨区長は「区としても“落語のまち・すみだ”という新たな魅力を発信していくとともに、人情味豊かな師匠の落語にあやかり、笑顔と賑わいがあふれる『暮らし続けたい、働き続けたい、訪れたいまち』の実現に全力で取り組んでいきます」と年頭の辞を述べた。