巨人のドラフト1位・石塚裕惺内野手(18)=花咲徳栄=が8日、24年に新設されたジャイアンツ寮に入寮した。母校の恩師・岩井隆監督(54)から贈られた「一歩一歩」の言葉を胸に、プロの厳しい競争を勝ち抜く覚悟を示した。最新器具のそろう寮のトレーニング室で鍛錬する日々を思い描き、ドジャース・大谷翔平投手(30)が愛用するマットレスを持ち込んで睡眠の質にもこだわりを明かした。坂本、岡本ら偉大な先輩が記録した高卒野手1年目の1軍初安打に向け、着実に成長していく。
金の卵の門出にふさわしく、空は青く澄み渡った。石塚は目を輝かせながら、ジャイアンツの門をたたいた。「すごく楽しみにしていた日。やっときたか、そういう思いです」。ドラ1ルーキーは高鳴る胸を抑えきれない様子で、笑みを見せた。
恩師の金言を胸に、激しい競争へ飛び込む。「1年目はその言葉を大事に」と持ち込んだ荷物から取り出したのは、花咲徳栄・岩井監督から直筆で「一歩一歩」と記されたマグカップだった。
「自分が目指しているところに焦ることなく、だけど、着実に進んでいけるようにという意味を込められた言葉。しっかり常に頭に入れながらやれば、体も動くかと思う」
高校3年間指導を受け、栄えある巨人のドラ1に導いてくれた名将。全てに通ずる“教え”を「心」に刻み、高校野球を引退してからも着実に「技」を磨いてきた。高卒野手にとって“最初の壁”となる木製バットへの対応も、引退後に練習量を落とすことなく打ち込むことで感覚を養っている。「体」の面でも、プロで戦える肉体を目指し、意欲的にトレーニングや食事に取り組んだ。昨夏は83キロだった体重が、年末の時点で3~4キロの増量に成功した。
さらに、肉体づくりに欠かせない睡眠の質にもこだわる。ドジャース・大谷も愛用し、睡眠コンディショニングサポート契約を結ぶ寝具メーカー「西川」のマットレスも持ち込んだ。プロ入りに際し、肩の位置や枕の高さなどを精密に測定し、フルオーダーした。「そういう超一流のスポーツ選手も睡眠を大事にされている。簡単にまねできるところだと思うので、同じ物を持ってきました」。細部にこだわる高い意識、何でも吸収する貪欲さも頼もしく映る。
地道な鍛錬を積み重ねるが、遠慮をするつもりはない。阿部慎之助監督(45)は「いいものは何歳だろうと使えばいい。良ければ1年目から使うよ」と期待を語っていた。その言葉は、チェック済みだ。「阿部監督もメディアを通じて良ければどんどん使うと言ってくれている。どんどんアピールできるようにガツガツやっていきたい」と意気込む。目標に掲げる高卒新人1年目での1軍初安打に向け、歩みは止めない。
新人合同自主トレは14日から始まる。「やれることはやってきたつもり。(新人合同自主トレで)もう一回しっかりやっていく必要があるかなと思います」。この日は寮の一室にある王貞治氏、長嶋茂雄氏の特大パネルの前で素振りも披露した。レジェンドに見守られ、巨人・石塚が一歩目を踏み出した。(臼井 恭香)
◆近年の巨人ドラ1の入寮
▽20年・堀田賢慎(青森山田) 地元・花巻名産の縁起物「花巻傘」を持参。「幹のように太く、傘が開くように才能を開花させる」との意味がある。
▽21年・平内龍太(亜大) 亡き祖父からもらった元楽天監督の故・星野仙一氏の言葉「迷ったら前に出ろ」が書かれた色紙を持参。
▽22年・大勢(関西国際大) 知人にもらった木製プレートを持参。「今やるべきことを、ひたむきにやっていけばその名の通り大勢の人の心を、動かしていけるんだ」など名前から連想した言葉が記されている。
▽23年・浅野翔吾(高松商) 「まだ18歳なんですけど、ひげが濃いので」と新品の電動シェーバーを持参。ベビーパウダー、学校の仲間と恩師の寄せ書き、抱き枕、ウクレレも持ち込む。
▽24年・西舘勇陽(中大) 花巻東の大先輩・大谷翔平(ドジャース)も使用する西川のマットレス「エアー」を持参。「野球用品と私生活で使う物だけ」と荷物は最小限。