商売繁盛の神様「えべっさん」の総本社である兵庫県・西宮市の西宮神社で10日、参拝の一番乗りを目指して疾走する年始恒例の伝統神事「福男選び」が行われた。
マイナス2度と冷え込みの厳しい午前6時に門が開かれ、約230メートル先の本殿へ向けて、難コースの境内を参加者が一斉に駆け抜け、くじ番号16番を引いた兵庫県立宝塚高校2年の大岸史弥さん=兵庫県宝塚市=が一番福となった。
陸上部の仲間と前日に「参加しよう」」と急きょ決めて初参加。他の仲間3人は有利なAブロック(108人)の抽選に漏れたが「やったれ!」とエールをもらい、100メートル走12秒台前半の俊足を生かし、先頭で本殿に“ゴール”した。一番福には「全然、実感が湧かない」と信じられない表情で「この後、学校です」と報道陣を笑わせた。
陸上部では円盤投げのほか、やり投げもやっており、昨年のパリ五輪金メダリストの北口榛花の活躍ぶりには「自分も上手になりたい」と刺激を受けたという。
1週間後の17日は、阪神・淡路大震災から30年。当時、大阪在住だった母から「揺れがすごかった」と伝え聞いたが「地震で被害に遭われた方に向け、募金活動などで助けられたら」と、つかんだ福を被災地に授けるつもりだ。
また、昨年元日に発生した能登半島地震で被災した石川県珠洲市の須受(すず)八幡宮の神主・小林隼也さんが神事運営に協力。開門時の裏方の花形「門押さえ」を担当した。小林さんは「被災地復興の扉を開くんだという思いの丈を伝えました。復興への歩みはゆっくりでも、自分たちのペースでやっていきたい。福は目に見えるものではないですが、熱気のある福を持って帰って、能登に根付けばいいですね」と話していた。
二番福で、父がガーナ人の龍谷大学3年・小松勇輝クワァベナさん=大阪府東大阪市=、三番福の同志社大学4年・矢吹彰大さん=京都府京田辺市=も初参加だった。