◆プロボクシング ▽WBA、WBC、IBF、WBO世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)統一戦12回戦 統一王者・井上尚弥―キム・イェジョン(2025年1月24日、東京・有明アリーナ)
ボクシングの大橋ジムは11日、スーパーバンタム級世界4団体統一王者・井上尚弥(31)=大橋=の防衛戦(24日・有明アリーナ)の挑戦者が、IBF、WBO世界同級1位サム・グッドマン(26)=オーストラリア=からWBO世界同級11位キム・イェジョン(32)=韓国=に変更になったと発表した。グッドマン陣営からこの日早朝に昨年12月に続き、再び左目上を切ったと連絡があった。キムは日本人選手相手に7戦全勝の「日本人キラー」の異名を取る。
ゴングまで12日。井上の対戦相手が、好戦的なファイトスタイルから「トラブルメーカー」の愛称を持つキムに変わった。会見した大橋秀行会長(59)は、井上に変更の連絡した時の様子を「今回はさすがにビックリしていた。『エーッ』って。前回(昨年12月の延期決定時)のように『そうっすか』という感じではない」と明かした。
大橋会長の会見後、井上は自身のSNSを更新。「正直驚きましたがこんな状況でも対戦相手を用意してくれていた大橋会長に感謝します」と驚きと感謝を記し、「試合まで2週間を切りましたが切り替えられています。ファンの皆さんには大変申し訳なく思いますが、1月24日は応援よろしくお願いします。当日は最高のパフォーマンスをお見せします」と約束した。
昨年12月24日に対戦予定だったが、グッドマンがスパーリングで左目上を裂傷し、興行は1か月延期に。この日朝、同じ箇所を再び負傷し、グッドマン陣営から試合辞退を伝えた。大橋会長にとっても「小学生の頃から50年くらいボクシングを見ているが、初めての体験。自分にも、井上にとっても良いキャリアになる」という緊急事態だったが、迅速に対応した。「こういうことも想定してリザーブ選手を用意していた」と24日の前座に出場予定だったキムを抜てき。「30~40分ほどで話をまとめられて、4団体統一戦として問題なく承認された」という。
キムは日本人選手7人と対戦して全勝の「日本人キラー」。163センチの右ボクサーファイターで、過去にスーパーバンタム級でWBCユース王座、IBFアジア王座、WBOオリエンタル王座も獲得。戦績は25戦21勝(13KO)2敗2分け。「トラブルメーカー」の愛称を持つキムに対し、大橋会長は「嫌な予感はしますが」と新たなトラブルを警戒しつつも「いい試合になるように期待したい」と話した。キムは大橋ジムを通じ「私は日本人選手に対して7戦7勝。自分の力を全て出して、キャリア最大の大一番を8勝目で飾りたい」と意気込みを語った。
今回の変更で今後のビッグマッチ路線に変更はない。井上は今回の防衛戦を乗り越えれば、今春にも米ラスベガスでWBC1位のアラン・ピカソ(24)=メキシコ=、今秋にはサウジアラビアでWBA暫定王者のムロジョン・アフマダリエフ(30)=ウズベキスタン=との対戦も浮上している。大橋会長も「ピカソ、アフマダリエフ、このへんでいくと思う」と示唆。アクシデントをものともせず、最強ロードを着々と歩んでいく。(勝田 成紀)
◆井上―グッドマン戦の経緯
▶昨年5月6日
東京ドームでルイス・ネリ(メキシコ)を6回TKOで下して防衛に成功後、井上がグッドマンをリングに上げ「9月頃防衛戦をしたい」と呼びかけ、グッドマンも「絶対やりましょう」と応えた。
▶同10月24日
12月24日にグッドマンと防衛戦を行うことを発表。井上は会見にオンライン参加したグッドマンに逃げ回らず「熱い試合」をするよう要望。
▶同12月14日
グッドマンが来日直前のスパーリングで左目上を裂傷。4針縫ったことで、興行の1か月延期が決定。
▶今年1月11日
グッドマンが再度負傷したため、挑戦者が予備選手としてオファーしていたキムに変更。
◆チケット 井上の対戦者変更による新たなチケットの払い戻しは行われない。チケット券面は昨年12月24日のものも有効。