東京六大学野球リーグの東大が12日、東京・文京区内の東大球場で始動。リードオフマンの酒井捷(すぐる)外野手(3年=仙台二)が進路を「プロ一本」と宣言した。
50メートル走6秒0の俊足を誇り、2年秋には打率3割1分6厘で外野手のベストナインに輝いたバットマン。進路について「プロに行きたいっていう気持ちは年々強くなっていますし、めちゃくちゃ強い思いで絶対にプロに行く覚悟でやってます」と言い切った。
中2だった2017年秋、東大はエース左腕・宮台康平の活躍で勝ち点を奪い、宮台はドラフト7位で日本ハムに入団した。報道で知り、心を躍らせた。
「まずそこで東大野球部を知ったのと、東大からプロに行くっていう道もあるんだと。高校に入って実際に東大を目指したわけなんですけど、東大に受かった時に、六大学の舞台で野球ができるなって。そこで自分は何を目標にしていくんだろうって思った時、プロ野球の舞台をもう1度、目標にしたいと思ったんです」
東大では1年秋にリーグ戦デビューし、2年春から不動のレギュラーに。だが3年春の開幕を目前に控えた2月下旬の鹿児島キャンプで、守備練習中に右膝を負傷。診断は「右膝前十字じん帯断裂」だった。PRP療法で治療し、秋のリーグ戦から復帰。だが打率1割8分2厘と本領発揮はならなかった。
「昨年はすごく厳しい1年間で、けがから始まって秋のリーグ戦も厳しい結果に終わったんですけど、人間的に成長できた。自分の悪い成績を美化するような言い方はしたくないんですけど、けがを通して自分の将来についてよく考えたり、人生観にも変化がありました。秋のリーグ戦は悔しい結果があったからこそ、今こうやって熱心に練習できている。学びがあった1年だったと思います」
春のリーグ戦の目標は、東大では1995年春の間宮敦(打率4割1分9厘)以来、30年ぶりの首位打者。現在は外部コーチの元ヤクルト外野手・荒井幸雄氏、打撃アナリスト・栗山彰恭氏の指導も受け、「パワーで打球を飛ばすというよりは、単純に打球速度が上がってアベレージを上げていけたらいいなっていう発想。結果として長打が増えてきたら」と打撃フォームの改良に心血を注ぐ。
東大からNPB入りは過去6人で、全て投手。野手なら史上初だ。「4割打ちたい。実現させるための練習はやります」と意気込む酒井。どん底からはい上がった強い心と高い技術で、正々堂々と勝負する。(加藤 弘士)