◆サッカー ◇全日本高校女子選手権 最終日 ▽決勝 藤枝順心5―0神村学園(12日、兵庫・ノエビアスタジアム神戸)
藤枝順心が歴史に残る偉業を成し遂げた。決勝が行われ、神村学園(鹿児島)に5―0の完勝。史上初の3連覇、史上2校目となる総体も含めた全国5連覇を達成した。前半4分FW藤原凛音(3年)=新潟内定=が先制弾。同12分にはDF柘植沙羽(3年)=ちふれ埼玉内定=が加点して突き放した。6戦全て完封し計39得点。異次元の強さで史上最多を更新する8度目の頂点に立った。
涙する者、安堵(あんど)する者、満面の笑みを浮かべる者、思い思いの表情で感慨に浸った。藤枝順心を含め過去4校が5度挑戦して果たせなかったV3。全試合完封、計39得点の圧倒的成績で飾ってみせた。中村翔監督(36)は「この子たちならやれると思っていた」と孝行娘たちをたたえた。
WEリーグ内定組が火を付けた。前半4分、MF葛西唯衣(3年)の縦パスに反応した藤原が右足で放り込んだ。「メディアで自分以外の人が“エース”と記事に出ていて反骨心にしてきた。自分がエースだと」と今大会6号に胸を張った。同12分には藤原の左CKのこぼれに柘植が食らいつき加点。「流れを持ってくることができた」。センターバックとしても要所で体を張り、4大会ぶり3度目の無失点Vに大きく貢献。「チームみんなで粘り強い守備ができた」と感謝した。
女王への道は平たんではなかった。昨秋の県決勝では常葉大橘に0―1。MF植本愛実(3年)=千葉内定=、MF佐藤ふう(3年)のダブル主将を中心に足元を見つめ直した。「絶対王者」を合言葉に、サッカーや私生活の反省点、課題を各自が記すシートを取り入れた。学年の垣根を取り払い、お互いに書いたものをチェック。足りなかったコミュニケーションが活発になった。「目標への執着は一番成長できた」と佐藤。後半45分からピッチに入る際は、大会中に約束した通り植本からキャプテンマークを受け取った。目に見えない固い絆が、強さの根底にあった。
今後、植本ら3人はWEリーグへ、その他の選手も大学で競技を続ける。試合後のロッカー、植本は「ここに帰ってくるんだよ」と後輩へバトンを渡した。V4、さらにその先へ。女王の系譜は受け継がれる。
(武藤 瑞基)
◆藤枝順心の記録ラッシュ
▽3連覇 過去、神村学園、常盤木学園、日ノ本学園、順心がV2まで達成。3連覇は大会初。▽全国5連覇 総体も含めた5大会連続優勝は13~15年に日ノ本学園が記録して以来2校目。
▽優勝回数 過去7度はすでに最多。自校が持つ記録を8に伸ばした。
▽無失点V 過去4校が達成。順心は唯一複数回(17、20年度)達成し、今回は3度目となる。
▽決勝スコア 5得点は96年度に記録した埼玉(5〇1)と並び最多。5点差は過去最大。