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前橋育英が決勝最多20人PK制して日本一!8人目止めた直後味方失敗もGK藤原「任せろ」10人目ストップ

スポーツ報知 2025年1月14日 5時0分

◆第103回全国高校サッカー選手権▽決勝 前橋育英(群馬)1―1(PK9―8)流通経大柏(千葉)(13日・国立競技場)

 前橋育英(群馬)が歴史に残る激闘を制して、7大会ぶり2度目の優勝を果たした。流通経大柏(千葉)戦は延長を終えて1―1で突入したPK戦を9―8で制した。決勝のPK戦は4回目で、10人目まで続いたのは史上最長。就任43年目の山田耕介監督(65)は、史上最多5万8347人が駆けつけた国立競技場で歓喜の瞬間を味わった。流通経大柏は7大会前と同じ顔合わせとなった決勝で雪辱を果たせず、17大会ぶり制覇を逃した。

 決めれば優勝のプレッシャーか。前橋育英の8人目・MF白井のキックは大きく枠を外れた。白井はそのままピッチに倒れ込み、涙が止まらず。65歳の山田監督はベンチ前でひっくり返り、絶句した。泣きじゃくる2年生に駆け寄ったのが、GK藤原だった。「俺がもう1本止めるから。任せとけ」。後輩をなぐさめるため、そして自身を奮い立たせるための言葉だった。

 8―8で迎えた10人目。藤原は自身の右をとらえたキックをはじき、ほえた。大会史上最多5万8347人が固唾(かたず)をのんで見守った10人目後攻。柴野のキックはネットを揺らした。「タイガー軍団」に歓喜の瞬間が訪れた。守護神は「お前が外したおかげで、俺の見せ場が来たよ」と、ようやく涙が止まった白井の肩をたたいた。

 就任43年目、選手権の酸いも甘いも知る山田監督は「PKじゃないと勝てないと感じていた」と振り返った。自身が率いた選手権でのPK成績はこれまで6勝7敗。「前橋育英はPKが弱い」とぼやき、PK戦中は「神様お願いしますって感じ」と目を閉じていたが、2回戦・愛工大名電戦のPK戦(6〇5)から巧妙にキッカーや順番を入れ替えた。

 4人目に入れるプランもあったGK藤原が「止めるのに集中させてください」と辞退。指揮官は覚悟を信じ、PK戦から主将マークを託された守護神は2本止めて応えた。時に「運任せ」とも言われるPK戦だが、運をたぐり寄せるだけの経験と戦略があった。

 昨夏の総体で群馬県V7を阻まれた。主将の石井はミスが続き「お前ができてないじゃん」「もっと褒めろよ」と仲間から突き放された。バラバラだった。頼ったのは「伝統」だ。17年度の初優勝時のチームが掲げていた5原則「球際、ハードワーク、攻守の切り替え、声(を出す)、ファースト(競り合い)とセカンド(ボールの拾い合い)」を徹底。指揮官は優勝当時の映像を繰り返し見せた。「日本一」も禁句とし、目の前の試合に勝利することを厳命し続けた。

 山田監督が「何度も死にかけた」と自虐するほどのチームは、勝ち上がるたびに成長し、頂点に立った。「生徒たちが本当によく頑張ってくれた。高校サッカーは素晴らしい」と指揮官。小粒で、バラバラで、勝負弱かったはずのチームは日本一にふさわしい集団になっていた。(岡島 智哉)

 ◆選手権のPK戦最大スコア 第97回大会2回戦の帝京長岡(新潟)―旭川実(北海道)の17―16が最大。のべ38人がキッカーを務めた。次点は第65回大会準々決勝・室蘭大谷(現・北海道大谷室蘭)―宇都宮学園(現・文星芸大付)で記録した15―14。今大会では、1回戦の札幌大谷(北海道)―藤井学園寒川(香川)でのべ28人が蹴り、12―11での決着となった試合が最多。

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