将棋の藤井聡太王将(22)=竜王、名人、王位、王座、棋王、棋聖=に永瀬拓矢九段(32)が挑戦する第74期王将戦七番勝負第1局は13日、静岡県掛川市「掛川城 二の丸茶室」で前日から指し継がれ、藤井が112手で勝利した。今年初のタイトル戦を白星で飾り、八冠返り咲きを目指す2025年も上々の滑り出しとなった。第2局は25、26日に京都府京都市「伏見稲荷大社」で行われる。(中西 珠友)
対局開始時には日光が対局場を明るく照らしたが、藤井の顔は終局まで晴れなかった。それでも盤面をじっと見つめ、最後まで集中して2025年タイトル戦初戦も逆転での白星スタート。対局を終え「序盤の細かなところに課題が残った」と反省し、約1時間の感想戦でも冷静に分析。途中、練習将棋で長い付き合いのある永瀬と白い歯を見せて笑う場面もあった。
振り駒の結果、5枚の歩のうち3枚の「と金」が出て後手番に回った藤井。戦型は相掛かりで、序盤は互いに深く読み合った。永瀬の1筋の攻防や飛車の活躍で藤井は形勢を損ね、46手目で1時間3分の長考。封じ手を促された永瀬が47手目を封じ、藤井はやや劣勢で1日目を終えた。
2日目に入っても、永瀬が左右の桂を盤中央に進め、依然リードを広げた。一方の藤井は、中盤まで永瀬の研究手に慎重に時間を費やした。時折苦しそうな表情も浮かべ、54手目では1時間30分の長考。2度の長考を「最初仕掛けられたので、端にどう対応するか難しい展開になった」と振り返り「持ち駒を増やして、どこかで反撃に出る機会ができれば。駒の効率をあげて、何とか勝負できる形ができれば」だったと明かした。
両者の持ち時間(8時間)が1時間を切る70手過ぎから形勢に変化が。永瀬が受け身になると、すかさず藤井はふみこんだ。藤井は互角に持ち込み「攻め合いになって、楽しみが出てきた」と少しずつ納得の指しに。92手目に金を持ち駒にして「(永瀬からの)詰みがなければ」と勝利を意識し始めたという。その後も最善手を重ねて逆転した。
第1局を白星発進した藤井。2月2日からの棋王戦五番勝負とどちらかを先に防衛すれば、タイトル獲得回数で谷川浩司十七世名人の記録(27回)に並び、歴代5位タイに。さらに王将、棋王戦とも防衛すれば、単独5位となる。次局に向けて「しっかり準備したい」と意気込んだ。