高校通算４５発の強打者で、投手としても最速１５３キロを誇る桐朋（東京）の森井翔太郎遊撃手（３年）がアスレチックス入団を決断したことが１４日、スポーツ報知の取材で分かった。米９球団のオファーから絞り込み、マイナー契約を結ぶ見通し。米球界関係者によれば、契約金は１５０万ドル（約２億４０００万円）とみられる。偏差値７１を誇る難関進学校の大器が、大志を抱いて海を渡る。
投打二刀流の逸材・森井の進路が判明した。アスレチックスだ。米９球団が獲得に乗り出す中、ブラッド・ピット主演の映画「マネー・ボール」の舞台となった古豪と、早ければ解禁日となる米国時間１５日（日本時間１６日）にもマイナー契約を結ぶ。
投げては最速１５３キロ、左打ちの遊撃手としても高校通算４５発を誇る森井には、昨年の年明けからＮＰＢやＭＬＢ、米大学の関係者が視察に訪れるようになった。昨夏の西東京大会初戦・富士森戦では、府中市民球場の客席にアスレチックス、ドジャース、カージナルスを含め日米１４球団４２人ものスカウトが陣取り、熱視線を注いだ。９月２日には米大学進学、国内プロも視野に入れる中、プロ志望届を提出。直後には家族で渡米して６日間、メジャーや１Ａ、米大学の施設を視察した。自身の目で確かめ、進路をメジャー球団に絞った。
昨秋のドラフト会議前には、国内１２球団に米球界挑戦の意志が固い旨の文書を送付。指名しないよう理解を求めてきた。あるＮＰＢ球団のスカウトは「本来ならドラフト１位で消えただろう」と明かした。ドラフト上位候補の高校生がＮＰＢを経由せずに米球団と契約すれば、極めて異例。かつて菊池雄星や大谷翔平（ともに花巻東）らも真剣に志しながら、最終的には国内プロに入団した経緯がある。森井はパイオニアになる。
米球界関係者はその契約金を「１５０万ドル」と証言。ＮＰＢ新人選手の契約金の上限は１億円、出来高払い５０００万円。それを上回る金額が提示されたとなれば、国内アマ選手のＭＬＢ挑戦が今後、加速する可能性もある。
森井は昨秋、高卒で直接メジャーに挑戦する心境について、スポーツ報知にこう語った。「子供の頃からの夢であるメジャーリーガーとして活躍するために、一番可能性が高いと思いました。夢に挑戦するチャンスが巡ってきて、ワクワクしています。マイナーからはい上がるのは、並大抵のことではない。下から一つ一つ、はい上がっていきたい」。アスレチックスは２８年からラスベガスの新球場に移転する。“ＭＯＲＩＩ”はベガスのスターになれるか。前例なき挑戦が幕を開ける。
◆森井 翔太郎（もりい・しょうたろう）２００６年１２月１５日、東京・府中市生まれ。１８歳。桐朋小１年時に住吉ビクトリーで野球を始め、２年時から武蔵府中リトルに所属、４、５年時に全国Ｖ。６年時にライオンズジュニア選出。桐朋中では練馬北シニアに在籍後、１年秋から同校軟式野球部でプレー。桐朋では１年夏から三塁のレギュラー。２年秋から遊撃手。１８３センチ、８８キロ。右投左打。
◆２５歳以下のメジャー挑戦 メジャー球団が２５歳未満の海外選手を獲得する場合、契約金等の総額を年間５００万ドル（約７億９０００万円）程度に制限する“２５歳ルール”が設定され、マイナー契約しかできない。ＮＰＢ球団から２５歳以下でポスティングシステムを利用したのは過去に１７年オフの日本ハム・大谷（当時２３）がおり、契約金２３１万５０００ドル（約２億６０００万円＝当時のレート）、年俸５４万５０００ドル（約６１００万円＝同）でエンゼルスに移籍。今オフにはロッテから２３歳の佐々木が同システムを申請中。
◆アスレチックス ア・リーグ創設の１９０１年、フィラデルフィアで誕生。５５年にカンザスシティー、６８年にオークランドに移転。今季から３年間はサクラメントの球場を使い、２８年にはラスベガスに新球場が開場予定。７２年からの３年連続ワールドシリーズ制覇など９度の世界一。日本人選手は２００５年藪、１０年岩村、１１年松井秀、１３年岡島、２３年藤浪が所属。２０年からは冨岡聖平投手がマイナー契約で在籍。２３年には借金６２で最下位に沈むなど直近４年はポストシーズン進出なし。
◆アマ球界から渡米しメジャーに昇格した３選手
マック鈴木投手＝滝川二を中退。１９９３年にマリナーズと契約金７５万ドル（約８３００万円）でマイナー契約し９６年昇格。通算１１７試合１６勝３１敗。
多田野数人投手＝立大４年時の２００２年にインディアンス（現ガーディアンズ）とマイナー契約。０４年に昇格。通算１５試合１勝１敗。
田沢純一投手＝新日本石油ＥＮＥＯＳ（現ＥＮＥＯＳ）からＲソックスと３年総額４００万ドル（同３億９０００万円）でメジャー契約。０９年に昇格し通算３８８試合２１勝２６敗、８９ホールド。
※レートは全て当時。金額は推定