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【新春浅草歌舞伎で奮闘する7人の若武者たち】第1回=中村橋之助

スポーツ報知 2025年1月15日 10時0分

 若手歌舞伎俳優の登竜門「新春浅草歌舞伎」のメンバーが今年から一新され、東京・浅草公会堂で26日まで上演されている。スポーツ報知では、リーダー的存在の中村橋之助をはじめ、大役に挑み奮闘する7人にインタビュー。連載形式で若武者たちの公演にかける熱意や素顔を紹介する。

 2日の開幕から10日ほどが経過。前回で卒業した尾上松也からバトンを受け継ぎ、メンバーを引っ張る橋之助はキラキラと目を輝かせて「あっという間に時間が過ぎていく感じ。毎日、とても充実しています」と声を弾ませた。

 中村芝翫、三田寛子夫妻の間に生まれた成駒屋3兄弟の長男で「元々、性格が“ザ・長男”なので、みんなを引っ張るのは得意な方だと思います」。昨年11月にはジンギスカンを食べて決起集会を行い、「みんなの意見を聞いて、誰も嫌な思いをしないように心掛けたい」と調整役を意識している。「楽屋も大部屋でみんな一緒。出番の人に『いってらっしゃい!』と送り出して、帰って来たら『おかえり!』と声を掛けたり、幼い頃から知っているメンバーが多いので、雰囲気はいいですよ」

 第1部「道行旅路の花聟 落人」で早野勘平、第2部「絵本太功記 尼ケ崎閑居の場」で武智光秀、「棒しばり」で曽根松兵衛を演じている。その中でも武智光秀は、戦国武将としての貫録を求められる時代物の大役だ。「義太夫狂言の中で、ど真ん中にいて、見せ場がある役。まだ手応えは感じないですけど、とにかく楽しい」。父の芝翫から教わり、竹藪(やぶ)から登場する場面から、どっしりとした力強さを感じさせる。

 早野勘平は心に葛藤を抱えながらも、それが出過ぎても良くない難役だ。年末に稽古で不安を感じ、尊敬する中村勘九郎に相談したところ「無理に顔を作らず、いい男でいればいいんだよ」とアドバイスされ、視界がクリアになった。おかる役の中村莟玉とのコンビは「初日、2日目は、とにかく緊張して何も覚えてないくらい。3日目くらいから心が通じ合うようになりました」。千秋楽まで、ステップアップを目指している。

 メンバーが日替わりで登場する、お年玉年始ご挨拶と演目解説も好評だ。「正直、僕らが一番不安だったのが、ご挨拶だったんですけど、大丈夫そうですね。徐々に慣れてきたので、これからは背伸びせずに自然体のご挨拶になると思います」。その中でも最年少の尾上左近が強心臓ぶりを発揮している。「大河(左近の本名)は口下手のイメージがあるかもしれませんが、ユーモアのセンスがあるし、しゃべりはうまいですよ」

 若手で公演を担うことに責任を感じている。「当初は、お客様からお金をいただくクオリティーを保てるのかと悩みましたが、稽古を重ねるうちに、その不安は消えました。僕ら全員、今できる全力の姿を見ていただければ、お客様に必死さが伝わると思います。ぜひ、僕らのガムシャラさを見に来てください」と呼びかけた。(有野 博幸)

 ◆中村橋之助(なかむら・はしのすけ)あらかると

 ▼生まれ 1995年12月26日、東京都生まれ。29歳。本名・中村国生

 ▼経歴 2000年9月、歌舞伎座で初舞台。16年10月、歌舞伎座で4代目中村橋之助を襲名。歌舞伎以外ではTBS系ドラマ「ノーサイド・ゲーム」(19年)、舞台「サンソン―ルイ16世の首を刎ねた男」(21年)などに出演。屋号は成駒屋

 ▼初主演映画 作曲家・中山晋平を演じた「シンペイ~歌こそすべて」が公開中

 ▼ニックネーム くにちゃん

 ▼好きな食べ物 脂身の多い牛肉

 ▼ライバル 弟の中村福之助、中村歌之助

 ▼憧れの存在 中村芝翫、中村勘九郎

 ▼いま一番欲しいもの ハイボールを飲むための炭酸を作る機械

 ▼好きな色 オレンジ

 ▼好きなスポーツ選手 元巨人の高橋由伸氏

 ▼座右の銘 道を切り拓くものは自信と勇気だ(ドラマ「ROOKIES」で佐藤隆太演じる川藤幸一の言葉)

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