巨人の伊藤優輔投手(28)が、FA移籍した甲斐拓也捕手(32)の人的補償でソフトバンクに移籍することが16日、決まった。ソフトバンクから球団に通知の連絡が入り正式発表された。
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伊藤の一番の武器は、自分が信じた道を貫き通せる強さにある。
最速156キロの即戦力右腕として入団した21年、夏頃から右肘に違和感を抱えた。同年11月には「自分をごまかしながら次の1年も投げ続けるより、きっぱりと手術をして『2年後に勝負』という形の方が不安を消すことができると思った」と、右肘内側側副じん帯再建術(トミー・ジョン手術)を決断。輝く未来をつかむため、長いリハビリに入った。
手術から実戦復帰までは約1年6か月。育成契約となり、投げられない期間も長かったが、下を向くことはなかった。けがの再発を防ぐために負担を少なく、効率的に力を伝えていくフォームを目指した。昨春キャンプでは球速が140キロ程度と状態が上がらず、苦しんだ時期もあったが徐々に復調。術前は平均で147~148キロだった球速は150~151キロまで上昇し、昨季2軍では守護神を任された。昨年7月に支配下に復帰して1軍デビューを果たすと、中継ぎとして1軍では8登板0勝0敗、防御率1・04。2軍では40登板で4勝0敗14セーブ、防御率1・29という好成績を残した。
ここまでの右腕の道のりを知る、大竹寛2軍投手コーチは昨年こう語っていた。「伊藤の素晴らしい部分は、思うようにいかない時にもコツコツと取り組みを継続できる心の強さ。継続はプロではすごく大事な能力。成果が出て僕もうれしかった」。どん底からはい上がってきた男は強い。新天地でも大輪の花を咲かせてくれるはずだ。(巨人ファーム担当キャップ・小島 和之)