今年の野球殿堂入りが16日発表され、プレーヤー表彰で資格取得1年目のイチロー、2年目の岩瀬仁紀両氏が選出され、エキスパート表彰は掛布雅之氏が選ばれた。特別表彰では元セ・リーグ審判の富沢宏哉氏が選出された。
ここで例年通り、私が野球殿堂入り投票用紙に書き込んだ方々を発表(敬称略)する。
▽プレーヤー(7人)
イチロー、岩瀬仁紀、松井稼頭央、前田智徳、小笠原道大、石井琢朗、T・ローズ
▽エキスパート(6人)
掛布雅之、足立光宏、松岡弘、谷沢健一、ブーマー、柴田勲
日米通算4367安打したイチロー氏が史上7人目の資格取得1年目での殿堂入り。同じように資格を取得したメジャーの野球殿堂(日本時間22日発表)で史上2人目の100%得票率なるかと注目されているが、日本の野球殿堂でも史上初の100%当選の可能性も指摘されていた。しかし、開票してみると有効投票349人中26人が記名せず、得票率92・6%に終わったことに少し驚いている。
プレーヤーズ表彰(かつての競技者表彰)での得票率1位は、初の記者投票となった1960年、プロ野球初の300勝投手のスタルヒン氏が97・3%の高率で選出された。資格取得1年目の殿堂入りはその後1994年の王貞治氏までなかった。ミスタープロ野球・長嶋茂雄氏は3度目、通算400勝の金田正一氏は5度目で、1988年同時にやっと殿堂入りを果たす時代もあった。
しかし、過去11年間で4人が資格取得1年目での殿堂入りしている最近の傾向は、米国に近くなってきた。それだけに記名しなかった「イチローの殿堂入りには早すぎるよ」と思っているであろう方々に、あなたの殿堂入りの基準はどうなっているのか聞いてみたい。
昨年、65・5%の票を得た岩瀬氏は、通算1002試合登板と407セーブという2つのNPB記録を保持しており、当然の殿堂入りだと思う。一方、エキスパート部門で昨年2票不足で逃した掛布氏は、同部門7度目で当選。昨年まで私は、通算本塁打が349本対338本、打率も2割9分2厘対2割8分5厘で掛布氏が上だったものの、MVP2度、9度のリーグ優勝に導いた長池徳士氏を評価していた。今回は他の5人は変えずに、三塁守備でも魅せてくれた掛布氏に入れることにした。
富沢さんは、昨年の決戦投票で1票足らずに殿堂入りを逃した元セ・リーグ審判員。今年も決戦投票で必要な75%超えの票を得た。野球ファン的には1978年日本シリーズ第7戦、ヤクルト・大杉勝男選手の左翼ポール際への打球を本塁打と判定し、阪急・上田利治監督の猛抗議につながったコールで知られている。それでも厳格なジャッジには定評があり、歴代2位の通算3775試合務めた。1975年、自費で米国の審判学校に留学し、審判の米留学の道を切り開く意味でも大きな功績を残した。
なお、報知新聞OBの宇佐美徹也さんも今回、箕島高野球部監督の尾藤公さんとともに決選投票に臨んだ。惜しくも富沢さんに及ばなかったが、来年こそは殿堂入りを果たす可能性が高くなってきた。
蛭間 豊章(ベースボール・アナリスト)