巨人の伊藤優輔投手(28)がFAで加入した甲斐拓也捕手(32)の人的補償でソフトバンクに移籍することが16日、両球団から発表された。新天地での背番号は「42」。ソフトバンクは甲斐の昨季年俸の40%にあたる8400万円の金銭補償も巨人から受け取る。
突然の通達も伊藤は前向きに受け止めた。甲斐の人的補償で巨人からソフトバンクへの移籍が決定。「今年はさらに飛躍できる年にしようと思っていた矢先の出来事で少し驚いてはいるのですが、4年間のジャイアンツでの経験を糧にしてホークスで活躍し、日本シリーズでジャイアンツと戦えるように頑張っていきたい」と決意を口にした。
都小山台高出身の「都立の星」。最速156キロの即戦力右腕として憧れの巨人に入団も、1年目の21年11月に右肘トミー・ジョン手術を受けて育成選手になった。昨年7月に支配下復帰して1軍デビューし、中継ぎ8登板で防御率1・04。150キロ台の力強い速球を取り戻し、2軍でも40登板4勝0敗14セーブ、防御率1・29の好成績を残した。
昨年15勝した菅野がオリオールズ移籍。若手の競争で先発陣を底上げするため、伊藤も先発挑戦が決まっていた。12月27日にソフトバンク側に伝えた28人のプロテクトリスト外は苦肉の策。中大の先輩でもある阿部監督は「今年の飛躍を期待していた選手の一人でした。気持ちが強い投手ですから、新しい環境に移っても力を発揮してくれると思っています」とエールを送った。
ソフトバンクは今オフ、DeNAから上茶谷を現役ドラフト、浜口をトレードで獲得。前レッドソックスの上沢も含め投手整備を進める。三笠GMは「リストを見て総合的に決めた。伸びしろがある。先発の可能性も中継ぎで回またぎで投げてくれる可能性もある」と貴重な戦力と語った。
初の1軍経験周囲支え感謝 「約2年をリハビリに費やし、本当にたくさんの方に支えられて去年初めて1軍で投げることができた」と周囲の支えに感謝した伊藤。巨人の大竹寛2軍投手コーチが「思うようにいかない時にもコツコツと取り組みを継続できる心の強さは素晴らしい」と評する苦労人が、福岡で新たなスタートを切る。(片岡 優帆)
◆FAランクと補償 FA選手獲得で生じる補償は、その選手の旧所属球団での年俸ランクによる。外国人を除く上位1~3位がA、4~10位がB、11位以下はCランク。A、Bには人的、金銭の補償が発生。Cは補償が不要。旧所属球団が新所属球団に人的補償を求めた場合、Aにはさらに旧年俸の50%、Bには同じく40%の補償が発生。人的補償を求めない場合、Aには旧年俸の80%、Bには60%の金銭補償。
◆伊藤 優輔(いとう・ゆうすけ)1997年1月14日、東京都出身。28歳。小山台3年春の14年センバツに21世紀枠で甲子園に出場。履正社に敗れ初戦敗退。中大、三菱パワーを経て2020年ドラフト4位で巨人入団。21年11月に右肘手術を受け22年から育成契約。昨年7月に支配下に復帰して1軍デビュー。178センチ、82キロ。右投右打。