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ミスタータイガース ・掛布雅之氏 エキスパート表彰で殿堂入り「自分でもびっくり」

スポーツ報知 2025年1月17日 5時0分

 今年の野球殿堂入りの通知式が16日、都内の野球殿堂博物館で行われ、エキスパート表彰で阪神OB会長・掛布雅之氏(69)=スポーツ報知評論家=の殿堂入りが決まった。昨年は選出に必要な有効投票数の75%以上に2票届かなかったが、今年は2票上回り選出。球団初の日本一に輝いた85年にクリーンアップを組んだランディ・バース氏(70)に2年遅れて殿堂入りした。

 貫いてきた野球愛、猛虎魂を評価された。「テスト生で阪神に入団させていただいた私が、こういう記者会見するようなことは考えてもみなかった。自分でもびっくりしている」。掛布氏が殿堂入りのスピーチで吐露した。

 入団テストで素質を買われ、ドラフト6位でスタートしたプロ野球人生。泥が似合う無名の高校生は、ミスタータイガースと称されるようになった。実働15年で1656安打、349本塁打。本塁打王3回、打点王1回。甲子園球場での通算144本塁打は歴代最多記録だ。

 数字以上に記憶に残るスーパースターだった。同い年の巨人・江川卓との真っ向勝負は語り草。今回、プレーヤー表彰で殿堂入りしたイチロー氏や岩瀬氏らが40歳を過ぎても現役を続けたのとは対照的に、33歳の若さで引退した。

 小さな体を目いっぱいに使ったスイングは「負担が大きかった」と満身創痍(そうい)の代償を負った。ただ、「阪神の4番」に殉じなければ、もっと長く続けられた。衰えた姿は見せたくなかったし、他球団からの移籍の誘いもすべて断った。「思い出すのは西武へのトレードが決まったときの田淵さんの最後の電話です。最後まで縦じまのユニホームを着て4番を打てよ、と言われたことが心の中に残っていまして」。4番打者の背中を学んだ田淵幸一氏との約束を明かした。

 後悔はしていない。もともと大好きな野球に「けじめ」をつけるためにプロ野球選手になった。4年で結果が出なければ辞めるつもりで猛練習に励んだ。ぬるま湯につけて指を一本ずつバットから、はがさなさけばいけないほど振り込んだ。三塁の守備も愚直に基本を繰り返した。巨人・原辰徳、広島・衣笠祥雄らと競っての6度のゴールデン・グラブ賞も誇りだ。

 2017年から阪神2軍監督を2年務めた。選手たちには「誰の目にも触れない継続こそ力になる」と説いた。自ら律するため、起床後すぐに約20分のトレーニングを実践するようになった。退任後、7年が経過してもモーニングルーティンは変わらず、この日も汗を流して東京入りした。

 今でも31番の「KAKEFU」のユニホームを着て球場に足を運ぶファンが少なくない。殿堂入りした阪神OBは、くしくも自身が31人目(フロント、指導者も含む)。「自分のやってきた野球にウソはなかった。野球というスポーツを選んで良かった」。歩んできた道は正しかった。(島尾 浩一郎)

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