けが人の減少へ、J2北海道コンサドーレ札幌に新役職が誕生した。今年、室蘭市出身の京谷洋佑氏(40)がパフォーマンスコーディネーターに就任した。トレーナーとして活動しながら、並行してトレーニング理論を学んできた実績を買われ、2021年からJ2山形で同職を務めた。15年から2年間、J2の岡山でトレーナーと選手の関係だった岩政大樹監督(42)の誘いを受け、20年ぶりに帰ってきた北海道で、1年を戦い抜ける体づくりを推し進めていく。
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札幌の練習中、京谷氏は絶えずグラウンド内を歩き、声を上げ、選手の動きに目を凝らす。新職のパフォーマンスコーディネーターとして、一つの誓いを立てている。「けが人が出たらそれは全て僕のせい。逆にけが人が出ず、みんながハッピーになるのが一番だから」。負傷者の防止へ、一瞬も気を緩めることはない。
室蘭東(現室蘭東翔)高に在学中、元Jリーガーで元車いすバスケットボール日本代表でもある兄・和幸氏(53)に勧められ、トレーナーへの道を志した。17年に入った山形でも当初は同職だったが、選手のコンディショニングづくりに興味を持ち、講習会に参加するなどしていた。それを聞いた当時の上司から「リハビリトレーナーをやりながらフィジカルの話ができるのは京谷さんの強み。メディカルとコーチをうまくつなげる役割ができるんじゃないか」と打診され、21年から新たな肩書で活動している。
選手の状態を見ながら練習量を調整し、ケアにあたり、別メニュー選手のリハビリにも付き合う。多忙な業務の中で重視するのは観察。「体の使い方の癖は見たら分かる。走ってるフォームで、それじゃあ太もも裏が張るよねとか。そういうのを見ながら声がけしたりする」。改善すべき点を把握した上で「もっと良くしたいという選手には、欲しいと言われたら筋トレメニューなどを個別に提供する」と早期の対応を図ってきた。
何より怖いのはけが人の増加。昨季の札幌もそれが9年ぶりJ2降格の一因になった。「こういう要因が積み重なって発生頻度が多かったんだろうなと感じるところはある」。同じ過ちを繰り返さないために「リハビリの人数が多くなるほど、正常な人間に対してアプローチできなくなり、歯車がかみ合わなくなる。けがした人を早く戻すのは仕事だが、させないようにどうするかが大事」と個々の動きに注視している。
練習の負荷にも策を凝らす。「山形で21年にクラモフスキー監督が来た時、35分のトレーニングで最初はみんな倒れていた。それを見て、トレーニングは時間じゃなく強度だと」。沖縄キャンプでも、2部練習の1回の練習は1時間ほどと長くない。それも確かな裏付けがあるから。「練習は最初から100で入らないとけがする。バンと入ると強度の高い練習ができるし、集中力が高いままだからけがはしない」。理論に基づいた取り組みから、昨年は負傷者が続出した沖縄キャンプでは現時点で、離脱者はFWサンチェスのみ。成果は確実に出ている。
岡山で2年間一緒だった岩政監督に打診され、故郷で歩む新たな道。「最初は抵抗のあった名前だけど、パフォーマンスでつながりをつくってチームをコーディネートするって、教頭先生みたいなものかなと。気に入っているし、潤滑油になっていければ」。最大の力を発揮できる体制づくりへ、京谷氏が尽力していく。(砂田 秀人)
◆京谷 洋佑(きょうや・ようすけ)1984年1月23日、室蘭市生まれ。室蘭東(現室蘭東翔)高から札幌の専門学校で3年間、トレーナーの勉強をした後、上京し、鍼灸(しんきゅう)の専門学校で3年間学ぶ。在学時にテニスの国際大会で錦織圭やフェデラーをケアした経験を持つ。卒業後、09年にJ2千葉レディースのトレーナーに就任。10年から当時J2の岡山、17年からJ2山形で同職を務め、21年に山形のパフォーマンスコーディネーターに就任。今季から札幌で同職に就いた。家族は妻と17日に2歳となった一男。