現役引退を決めた大相撲の第73代横綱・照ノ富士(33)=伊勢ケ浜=が17日、東京・両国国技館で会見を行った。照ノ富士は冒頭「現役を引退し、年寄・照ノ富士として、今後後進の指導に尽力して参りたいと思います。現役中たくさんの方に支えていただき、本当にありがとうございました。これからも頑張っていきますので、またご指導のほどよろしくお願いします」とあいさつした。
▽照ノ富士の主な一問一答は以下の通り。
―今の率直な気持ち。
「そうですね。14年間、本当に激しい相撲人生だったかなと振り返って思います」
―引退を決断するまでの経緯は。
「本当に自分の中で、できる限りのことを今まで尽くしてきたつもりですけど、今場所では思い通りの相撲もできなくなり、これ以上、この中途半端な気持ちと体で土俵に立つべきじゃないなと思い、引退することに決めました」
―師匠(伊勢ケ浜親方=元横綱・旭富士=)にはどの段階で伝えた。
「そうですね。初日の負けた日に師匠のところに行き、もう1回負けたら自分の中で引退したいなと思いますっていう話をしました」
―場所中、横綱から覚悟とも取れるような言葉もあった。初日の時点で決めていたのか。
「今までこの体と付き合いながら、まだ優勝できるっていう自分の中での自信があって相撲を取り続けてましたけど、今場所の前の体の状態、そして稽古内容を踏まえた上で、本当に不安も感じて来てましたので。こういう気持ちで土俵に立つべきじゃないかなっていう思いはありつつ、最後まで自分の中でやれることを精いっぱいやって、限界を乗り越えて、やりたいなと思って土俵に立ちましたけど、もちろん結果につながらなかったわけですから、自分の中で決めました」
―14年間の現役生活を振り返って。
「もちろん、良い時も悪い時もありましたけど、相撲人生を2回楽しむ良い機会になったんじゃないかなと思うし、そしてたくさんの方に支えられてきたなっていうのは実感してます」
―大関から一時は序二段まで番付を下げた。
「マイナスに捉えたら何でもうまくいかないので、自分はプラスに捉えてやってきました」
―そこから復活して横綱まで。横綱になって気持ちの変化は。
「そうですね。横綱に上がるまではがむしゃらに、ただ強くなりたい、横綱になりたいっていう思いで稽古やトレーニングに励んでやってきましたけど、横綱に上がってから本当に相撲の奥深さというか、この国技としてあるものがどういうものなのかということをちょっとずつ感じるようになり、それに関して深く思うようになりました」
―横綱昇進後、休場も多くなっていたが、自身の中での受け止めは。
「最初から横綱になる時は長く相撲取れないだろうっていう気持ちでいたんですけど、本当に周りのファンの方、そしていろんな方の支えや声があって、まだやれるっていう気力がありましたので、その気持ちだけでずっとやってきました」
―師匠への思い。
「本当に親方がいないと、この照ノ富士という力士を何も語れないと思うので。親方の教えを言ったこと以上にやるっていう思いでやってきました。あと親方に褒めてもらいたいっていう思いは常にありました」
―一人横綱という状況で相撲界を支えた。
「横綱を張ってる以上はやるべきことを全力尽くしてやってきたいと。一つの思いだけで、頑張ってました」
―その期間にコロナ禍にも見舞われた。厳しい社会情勢が続く中で、横綱としてどういう思いを持っていたのか。
「そういう時期に横綱に上がりましたし、今場所このお客さんの声援を聞いて、初めて横綱として土俵に立った時と全く違う声援、お客さんの温かさを感じ取れたので。ちょっとの間でも自分なりにやれることをやったかなと思います」
―横綱とはどういうものだったか。
「本当に力士の見本にならなきゃいけない。目指さなきゃいけない。そういう位置なので。求められることもたくさんあると思うんですけど、なったらなったでそれを感じ取れると思う。言葉で表せないけど、横綱は横綱かなと思います」
―思い出に残る一番。
「本当に一番一番に全力を尽くしてやってきたつもりなので、この一番っていうそういう相撲はあまり浮かばないんですけど、あえて言うとなると序二段に落ちて、一番最初に序二段の土俵のもう1回立ったその相撲じゃないかなと思います」
―相撲とは横綱にとってどういったものか。
「相撲というのは、自分が考えるのは、ただのスポーツではなく国技として、この日本に、私たち日本人の誇りを奮い立たすためにあるものの一つだと思って、それに関してこれだけの多くの方がリスペクトし、支えてくれてるものだと思うので。だからこそ、綺麗に美しくないとダメなものだと思うので。それを常に考えて生きてました」
―家族の存在は。
「奥さんと出会ってから12年間。本当に良い時も悪い時も一緒にいてくれた。ちょっとでも自分がサボり時も、その気持ちを横で奮い立たせてくれたのが、奥さん。なので本当に感謝しかありません」
―4年間を振り返ってやりきったという思いなのか、悔いがあるのか。
「全く。もうちょっとっていう気持ちはないですね。逆に言うと、もうやりすぎたかな」
―親方としてどういう力士を育てていきたい。
「この相撲の稽古、相撲界に入ると本当にいろんな面で人生をかけてやることになると思うし、その中で自分に嘘つかない、自分に負けない、そういう力士を育てていきたいなと思います。そういう力士は必ず強くなると思うので」
―ファンへのメッセージ。
「本当に長い間支えていただき、ありがとうございます。ファンの方々の温かい声援があったからこそ、この横綱の位置まで上がれたと思うし、そして休場して、みんなに応えるような成績はできなかったときも、温かく見守っていただいたので本当に感謝しかないので。これからも親方として、温かく見守っていただきたいなと思うので、これからもよろしくお願いします」