日本相撲協会は17日、横綱・照ノ富士(伊勢ケ浜)の現役引退、年寄・照ノ富士の襲名を発表。スポーツ報知の歴代大相撲担当記者が引退した横綱をねぎらった。
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大関から番付が一気に下がった2018年。幕内から陥落した照ノ富士の気持ちは沈んでいたように見えた。周囲から人も離れ、「何でも書くから」と遠ざけたかった私に、「オイ! 俺を取材しろ!」と人影まばらな支度部屋で叫んだこともあった。
無給になる幕下陥落が決定的となった同年の夏場所中。「当たれば大きいから」と故郷のモンゴルに帰って鉱物資源開発のビジネスを手がけたいと漏らしたことがあった。状況を考えれば冗談だとも思えない。あるモンゴル出身の親方に成功の可能性を聞くと、いかに難しい“投機”であるかを説明してくれた。レアメタルなどの資源が豊富な土地があるとはいえ、掘り当てられるかは未知数。この親方から「宝くじを買うようなものだ。思いとどまらせろ」と強い口調で返された。
結局、実業家に転身はせず力士を続け歴史に残る復活を遂げた。モンゴル名の「ガンエルデネ」の「ガン」は「鉄」という意味が込められているという。文字通り鉄のような強い心で、土俵から多くのものを掘り当てた横綱の強さを引退した今、改めて実感している。(98~99年、16~18年大相撲担当・網野 大一郎)