◆大相撲初場所7日目(18日、東京・両国国技館)
綱取りの大関・豊昇龍が、叔父の第68代横綱・朝青龍をほうふつとさせるスピード相撲で1敗を死守した。第48代横綱・大鵬を祖父に持ち、6連勝中だった西前頭3枚目・王鵬との同学年対決を送り倒しで制し、場所後の横綱昇進へ弾みをつけた。琴桜、大の里も勝ち、3大関がそろって白星を挙げたのは今場所初。7戦全勝は金峰山、不戦勝の千代翔馬の平幕2人。1敗が豊昇龍、王鵬、玉鷲、尊富士の4人となった。
豊昇龍が同期対決で激しく攻め抜いた。立ち合いで王鵬に一直線に当たり、強烈な突き、押しで土俵際に追い込む。前に出てきた相手の左腕をたぐって背中に回り込み、猛然と送り倒した。土俵下の王鵬に鋭い視線を送り「まあ、集中して良かったと思う。同期で負けたくないって気持ちもあるんで。何より一番は集中することを大事にしていた」と意を込めた。
王鵬は高校時代から互いを意識し、初土俵を踏んだ18年初場所。1月18日に前相撲で対戦し、すくい投げで敗れた入門同期だ。自身は歴代4位・優勝25回の朝青龍を叔父に持ち、王鵬の祖父は同2位・優勝32回の大鵬。横綱の遺伝子を受け継ぐ共通項もある。通算4勝5敗と負け越していたが「相手も突き押し相撲だけど、全く気にしていなかった。今までやってきた稽古を信じて、自分の相撲を取ることだけを考えた」。一人横綱の照ノ富士が17日に引退。自身が昇進を逃せば、来場所は1993年初場所以来の横綱空位となる危機に大関の貫禄を示し、対戦成績を五分に戻した。
前半戦のヤマ場と見られた注目の一番。初日から6連勝と好調だった王鵬に土を付け、6勝1敗とした。九重審判長(元大関・千代大海)も闘志あふれる姿に「大関の方が次の攻め手が速い。瞬発力や頭のひらめき、次の一手の速さは叔父さん譲り」と引き合いに出し、目を見張った。朝青龍は03年初場所を14勝1敗で制し、モンゴル出身で初めて一発で最高位をつかんだ。豊昇龍はその背中を追いかける。(林 直史)