6個のジョウロが鹿島を変える―。宮崎市内でキャンプを行うJ1鹿島は21日、トレーニングマッチでJ3金沢を3―0で下し、鬼木達新監督(50)就任後、Jクラブとの対外試合2戦目で初勝利を飾った。川崎で主要タイトル7冠を獲得した名将の下、18年のアジア・チャンピオンズリーグ以来のタイトル獲得へ、基礎技術の向上に一から励む新生・鹿島の姿を岡島智哉記者が「見た」。
ジョウロを手に、鹿島のスタッフがピッチを走り回る。選手がトレーニングに励むピッチの芝を濡(ぬ)らし、ボールをも濡らす。そして給水のため、水道へと駆けてゆく。施設には6個のスプリンクラー(散水装置)が準備してあるが、これらも当然、練習前、練習中と全稼働。その上で、スタッフによるジョウロ部隊も大忙しだ。
サッカーコートにジョウロを持ち込む光景は、なかなか見られるものではない。再建を託され「鹿島でタイトルを取りたい。目標はやっぱりリーグ優勝」と意気込む鬼木新監督による“改革案”の1つである。
水分を含んだピッチは、ボールが走るようになる。「パススピードの上がったボールを、正確にコントロールする技術を磨くため」(クラブ関係者)に、水をまく。6個のジョウロを駆使し、とことんまく。川崎に主要タイトル7冠をもたらした指揮官が、タイトルから6シーズン遠ざかる鹿島に持ち込もうとしている新たな文化・通称「止める・蹴る」を向上させるためだ。
この日は金沢に3―0で勝利し、対外試合初勝利となったが、鬼木監督は「まだまだやらなきゃいけないことは多い」と苦笑い。不用意なパスミスからボールを奪われ、ピンチを迎える場面が散見された。習得は一朝一夕にはいかない。
再建を目指すにあたり、ここが避けては通れない道であることを、選手もクラブも自覚している。2得点の徳田誉は「技術を伸ばせば試合に出られるとみんな思っているので、ギラギラしてやっている」と語り、鬼木監督も「練習で取り組んでいることに(対外試合でも)チャレンジしてくれている。成功例もたくさん」と目を細めた。「鹿島の復活は、6個のジョウロから始まった」なんて言える日が来ることを信じ、新生・鹿島はサッカーの基礎を徹底的に磨いていく。(岡島 智哉)