マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター・イチロー氏(51)が21日(日本時間22日)、米野球殿堂に選出された。日本人の米野球殿堂入り、日米両方の殿堂選出は史上初の快挙となった。
発表を受けて、自宅前で取材に応じた父・鈴木宣之さん(82)は「頑張った価値が出た。一生懸命やった結果だと思う」と喜びをかみしめた。満票には1票届かなかったが、「完璧な人間がおるのかなという気持ちだったので、どこか欠けていて、ちょうどいい」と頬を緩めた。
息子をプロ野球選手にすることが夢だった宣之さん。幼少期のイチロー氏を指導し続け、大打者への礎を築いた。イチロー氏が中学時代、練習試合で凡打を連発していた時には、ベンチにいたチームメートに「バットの出し方をこうしろ、って指示してくれ」と息子への“伝令”をお願いしたこともある。「そしたら、次の打席でライトへのホームランを打った。小学校からずっと一緒にやってきた自分の子供にだけ通じる。本当にうれしかった」。二人三脚で歩んできた思い出は尽きない。
イチロー氏がオリックスに入団した際には、宣之さんが筆を執り、「品格ある野球人」と記した色紙を贈った。「常に研究心を持ったイチローだったと思いますね」。
史上最長の7年連続首位打者、パ・リーグ最多記録となる5度の最多安打。NPB9シーズンで打撃タイトル19冠を獲得した。メジャー移籍した01年には、242安打、打率3割5分、56盗塁を記録し、史上2人目の新人王とMVPのW受賞を達成。それ以降、10シーズンで7度のリーグ最多安打。10年連続200安打、打率3割以上をマークした。プロとして、慢心することなく、謙虚に真摯(しんし)に野球と向き合い続けた。
殿堂入り発表後、イチロー氏からの連絡はまだない。それでも、指導者として野球界に貢献する息子に「指導者としても、正々堂々した態度で、品格ある野球人を築き上げてもらいたい。あの色紙、イチローは破り捨ててるかもしれんけどね」と目を細めた。色紙を渡した日から34年。また新たな勲章を手にした息子の顔を思い浮かべ、宣之さんは少し誇らしげに笑った。