【米ニューヨーク州クーパーズタウン】米野球殿堂は21日(日本時間22日)、今年の米殿堂入りメンバーを発表し、メジャー通算3089安打を放ったイチロー氏(51)=マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター=がアジア人で初めて選ばれた。
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手塩にかけて育てた我が子との記憶が、脳裏を駆け巡った。愛知・豊山町の自宅前で取材に応じた父・鈴木宣之さん(82)は「頑張った価値が出た。一生懸命やった結果だと思う」と喜びをかみしめた。満票には1票届かなかったが、「完璧な人間がおるのかなという気持ちだったので、どこか欠けていて、ちょうどいい」と、愛息と似たようなセリフを口にし、頬を緩めた。
息子をプロ野球選手にすることが夢だった宣之さん。イチロー氏が中学時代、練習試合で凡打を連発していた時には、ベンチにいたチームメートに「バットの出し方をこうしろ、って指示してくれ」と“伝令”。「そしたら、次の打席でライトへのホームランを打った。小学校からずっと一緒にやってきた自分の子供にだけ通じる」。二人三脚で歩んできた思い出は尽きない。
イチロー氏がオリックスに入団した際には、自ら筆をとり「品格ある野球人」と記した色紙を贈った。その思いは今も変わらない。「指導者としても、正々堂々とした態度で、品格ある野球人を築き上げてもらいたい。あの色紙、イチローは破り捨ててるかもしれんけどね」と目を細めた。
取材に応じた時点でイチロー氏から連絡はなかったが「51歳ですから。いいおっさんが親にそんな連絡なんかおそらく来ないでしょう」と笑い飛ばした。「常に研究心を持ったイチローだったと思いますね」。また新たな勲章を手にした息子を思い、誇らしげな表情を浮かべた。(森下 知玲)