◆大相撲初場所11日目(22日、東京・両国国技館)
西前頭14枚目・金峰山が大関・大の里を突き倒し、10勝目を挙げた。カザフスタン出身初の関取は10日目(21日)の初黒星から切り替え、単独トップを守った。大の里は4敗目。大関・豊昇龍は千代翔馬を寄り倒し、8勝3敗で勝ち越しを決めた。西前頭3枚目・王鵬は阿武剋を押し出し、2敗をキープ。優勝争いは金峰山を王鵬が1差で追い、3敗は豊昇龍と平幕の霧島、千代翔馬、尊富士となった。
金峰山に迷いはなかった。大の里との一番。立ち合いで「思い切っていく」と決めていた。もろ手突きから強烈な右のど輪でのけぞらせた。左に逃げる相手に再び右のど輪を浴びせ、大関に何もさせず突き倒した。取組後、土俵下に下りると「神様ありがとうございます」とつぶやいた。会心の白星に「自分の相撲を取ることに集中した。前に出て良かった」と胸を張った。
9連勝で迎えた前日(10日目)、小結・阿炎にわずか1秒で初めての土をつけられた。取組後は優勝争いの重圧の影響を否定したが、部屋に帰って映像を見返すと「硬すぎたな」と素直に認めた。ふと、頭に浮かんだ。「負けても切り替えないとダメ。それがお相撲さんの仕事だ」―。幕下に上がった22年初場所。プロ初黒星を喫した際に、木瀬親方(元幕内・肥後ノ海)にかけられた言葉だった。
原点に返り、苦い黒星も「いい勉強になった」と前向きに受け止めた。大の里は2学年下で日大と日体大時代に何度も対戦し、勝ち越していた「いいイメージ」を持って土俵に上がった。好成績で自身の取組が後半に組まれるようになり、観客や拍手など、日に日に盛り上がる館内の雰囲気も冷静に感じることができていた。
大関を破り、カザフスタン出身力士初Vへ向けて単独トップを死守。八角理事長(元横綱・北勝海)も「このままいきそうな感じだね。これで自信を持ったでしょう。馬力もあった」とうなった。27歳の大器は「あと2、3番勝ちたい。優勝するために頑張ります」と、これまで避けてきた「優勝」の2文字を初めて口にした。(林 直史)