中居正広氏が芸能界を引退すると発表した。昨年１２月１９日発売の週刊誌報道からわずか３６日目での決断。１９８６年の芸能界入りからアイドル活動、俳優業、テレビ番組のＭＣなどで隆盛を極めたスターが、約４０年間のタレント生活から無念の幕引きとなった。
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毎年の春先。プロ野球開幕に向けた取材で、膝を突き合わせる機会があった。話を聞くのは、いつも楽屋。少し構えながら扉をノックすると、「おー、今年もよろしくね」。両手を広げる、あのあいさつで、向こうから距離を縮めてくれた。
だが、自らのことについて発することは好まなかった。野球に関しては冗舌だったが、自身のこともＳＭＡＰのことも病のことも。キャリアに関するインタビューや著書のオファーは全て断っていた。
こんな形でキャリアを終えるとは想像もしていなかった。晩節を汚した。だが、アイドルとして多くの人を魅了し、ＭＣとして多くの人を笑顔にしてきた。被災地支援やボランティアにも積極的だった。私にとっても、彼と向き合う時間は刺激的だった。必ずこちらにも問い返す場面があり、背筋を正す瞬間でもあった。
この日も「少しでも先に」とファンにいち早くメールで引退を報告した。最後までファン思いの姿は変わらなかったが、最後まで自身の口で自らを語らなかった。中居正広氏の「素」を見たかった。ファンも私も置き去りになってしまった。（田中 雄己）