第97回センバツ高校野球大会(3月18日開幕・甲子園)に出場する32校を決める選考委員会が24日、大阪市内で開催され21世紀枠で玄界灘に浮かぶ離島の壱岐が初選出された。島民悲願の「壱岐から甲子園」が実現し、同校は歓喜の輪に包まれた。
コモンホールで選考委員会の発表を固唾(かたず)をのんで見守っていた壱岐ナイン。「壱岐」の言葉が出た瞬間、大きな歓声が上がった。「春一番」発祥の島に、一足早い春の知らせが届いた。
01年から始まった21世紀枠で離島から選出されたのは、03年・隠岐(島根)、11年・佐渡(新潟)、14年・大島(鹿児島)、16年・小豆島(現・小豆島中央・香川)の4度。壱岐は小豆島以来、9年ぶりの離島勢になる。
秋の県大会準々決勝では、昨夏に2年連続で夏の甲子園に出場した創成館に2―0で完封勝ち。決勝で海星に4―6で惜敗したが、創部49年目で春秋通じて初の九州大会出場を決めた。初戦の専大熊本玉名戦では6―3で勝利し、8強入り。準々決勝でエナジックスポーツ(沖縄)に2―9で7回コールド負けしたが、選考で大きな加点ポイントとなる、九州1勝を挙げていた。
選手21人、マネジャー4人の部員25人全員が壱岐島出身。だが知る人ぞ知る実力校だった。2年生世代は、勝本中で県大会V、全国16強。郷ノ浦中も九州大会を制している。故・村田兆治氏の提唱によって始まった全国離島交流中学生野球大会「離島甲子園」では、壱岐市選抜として1年生世代2023年大会で優勝している“黄金世代”。島民で「100年に一度の奇跡」と語られている壱岐ナインの快進撃は、ついに聖地までたどり着いた。
◆壱岐島(いきのしま) 長崎・壱岐市の離島で九州と対馬の間に位置する。壱岐市の人口は2万3778人(11月末時点)。鎌倉時代の2度の「元寇(げんこう)」では、元軍と島民との間で激しい戦いが行われた。「春一番」は同市郷ノ浦町の漁師53人が春の突風で遭難した1859年の事故が由来。市内には18の小学校と4つの中学校があり、高校は壱岐と壱岐商の2校がある。交通路は長崎空港から飛行機で30分、唐津からフェリーで1時間40分、博多ふ頭から高速船で70分、フェリーで2時間20分などが用意されている。釣り人の聖地とも呼ばれ、大型のアジ、イカ、ブリ、マダイ、シーバスなど魚種も豊富。