アジア人初の米野球殿堂入りしたイチロー氏(51)=マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター=が23日(日本時間24日)、ニューヨーク州クーパーズタウンの殿堂博物館で会見し、“イチロー節”を連発した。
自身8度目の訪問となった博物館。史上2人目の満票をあと1票で逃したが、得票率99・746%は史上3位。殿堂入り記念ユニホームに袖を通して臨んだ会見の冒頭では「どうやら1人投票してくれなかった人がいるようですが、ぜひ、自宅に招待して一緒にお酒を飲みたいので、シアトルまでお越しください」と自ら言及し、場内の笑いを誘った。
現代野球には、警鐘を鳴らした。メジャー通算3089安打、打率3割1分1厘の安打製造機。パワー任せで長打にこだわる打者が増えている現状に「もう、三振OKになっちゃっている。それはすごく残念。何だっていいからバットに当てればチャンスはある。少なくとも僕のアプローチと全く違う野球」。難しい球でも食らいついて、粘って安打を量産してきたとあって「今は追い込まれてから、ストライクゾーンを狭くして、甘いところを待ってというアプローチ。それだったら、僕、ここにいないです」と持論を展開した。
データを重視して、ベンチ内でタブレットを見つめる選手が増えたことに「僕がファンとしてそれを見たら残念になる」と言及。申告敬遠にも「ネクストバッターの選手がドキドキしたり、ざわざわと球場の雰囲気が変わるという感情がなくなる」と、変わりゆく近年の姿にさみしそうだった。
ともに殿堂入りしたサバシア氏、ワグナー氏と、記念のレリーフの設置箇所にサインを入れた。多くの歴史的展示物もある野球殿堂博物館。「当時の野球を自分なりに想像し、そういういろんな時代を経て今があるという気持ちに必ずなる。それがすごく大事だなと思うんです」。殿堂入りの式典は、7月27日に当地で再び開催される。
【イチロー氏に聞く】
―実際に殿堂博物館に足を踏み入れて。
「並んで同じ場所にいるものの、到底その先輩方には及ばないという気持ちですね。だから、これはゴールとも捉えられますけど、これからも僕の歩み方というか、その生き方によって近づいていけると思う」
―野球離れが懸念される。
「一つの目標に向かって皆で力を合わせて頑張るというのは、生きていく上ですごく大事なこと。一人では生きていけないし、生きていたって面白くもない。仲間がいてくれるから頑張れたり、面白かったり、楽しかったりする。だからこそ、壁が現れた時に、そこに向かっていこうと、それを越えていこうというエネルギーが生まれるんだと思う。これは野球の大きな魅力の一つです」
―メジャーを目指す子供たちへ。
「怖がらないで、自分が信じた道に飛び込んでほしい。人間関係はいろいろあります。良かれと思った結果でも惑わされることはあります。でも、信じている自分をつくっていれば、自分が信じた道に飛び込んでいけると思う。それを僕はしてきたつもりですけど、迷いなくそれをしてほしい」