2023年夏の甲子園を制した慶応(神奈川)が25日、横浜市内の同校日吉台野球場で、昨夏の西東京大会に特別支援学校では全国で初めて夏の大会へ単独出場した青鳥特別支援の部員11人と、知的障害を持つ中高生の硬式野球挑戦を支援する「甲子園夢プロジェクト」の選手27人と合同練習会を行った。
グラウンド上には絶えず、快活な声が響いた。「ナイスボール!」「いいぞ!」「よっしゃ~!!」。慶応ナインとゲストの選手たちはペアを組むと、マンツーマンでノックや打撃練習、ブルペン投球などに臨んだ。汗を流す中、笑顔で会話を重ね、関係性も自然と濃くなっていく。ともに白球を追いながら、交流を楽しんだ。
合同練習会は2021年にスタートし、のべ6度目。森林貴彦監督はその意義についてこう語った。
「野球という共通言語で、コミュニケーションを取る機会を設けたいと思っています。マンツーマンにしたのは、1対1で目の前のパートナーと会話して、いろんなことを感じてほしいからです。ボールがしっかり捕れた時の喜び…感想の中には、自分が忘れかけていた野球の楽しさを再認識できたという声もありました」
慶応の山田望意(のい)主将は会話をする中で、パートナーと「ヤクルトファン」という共通項を見つけ「今年は勝ってほしいね」と盛り上がった。「野球っていいなと、あらためて気づきました。みんな野球が好きで、野球をやりたい思いは自分たちよりも上だった。最初は『どうやって教えようかな』と思っていたんですが、最後はこちらが教わる側でした」と語った。
青鳥の久保田浩司監督は「レベルの差はあっても、野球を通じて、自然と分け隔てなくやっているのがすごくいいなと思う。回を重ねるほど、お互いの学びにつながっているのがうれしい」と目を細め、八木秋大主将も「慶応高校さんといろんな練習をして、もっとうまくなりたいなと思いました。春の大会には勝てるように頑張りたい」と瞳を輝かせた。白球は人と人とをつなぎ、笑顔をもたらす不思議な力を秘めている。(編集委員・加藤弘士)