全米野球記者協会会員の投票による2025年度野球殿堂入りが発表され、史上2人目の満票当選が期待されたイチローは、1票足らない得票率99・746%で歴代3位だった。
過去、同投票で満票当選(特別表彰などは除く)となったのは、通算652セーブの記録を持つ元ヤンキースのM・リベラ(2019年)ただ1人だ。
近年、どれだけ勝利に貢献したかを示す指標としてWARという数値がある。米データサイトの「Baseball Reference」の数値で見ると、リベラ氏はリリーフ投手という部分が響くようで、WARは56・3でなんと歴代233位。ちなみに、1票足りずで満票を逃した得票率2位のデレク・ジーターは71・3で95位。イチローは60・0で194位だ。
米殿堂投票の規定には現役生活10年以上プレーした選手で現役引退5年後としてあるのに加え、「投票は選手の成績、プレー能力、誠実さ、スポーツマンシップ、人格、選手がプレーしたチームへの貢献に基づいて行われるべき」となっている。
日本の野球殿堂では選考の要件として表彰委員会規定に、
①試合で表現した記録、技術が優れている者
②所属チームおよび野球の発展に顕著な功績をあげた者
③野球に対し誠実であり、スポーツマンシップを体現した者
④ファンに野球の魅力を伝えた者
それを考えればリベラ、ジーターは5度のワールドチャンピオンに大きな貢献したことが高く評価され、イチローは世界一経験はないものの、日本人初、そして27歳のデビューながら、長期間活躍したことが評価されたものだろう。
WAR182・6でトップの、通算714本塁打のベーブ・ルースの殿堂投票の得票率は95・1%、2位166・9の通算417勝右腕、ウォルター・ジョンソンは得票率83・6%、3位163・6の511勝したサイ・ヤングはなんと、1年目は落選し、2年目に得票率76・1%での殿堂入りした。
ちなみに通算762本塁打の記録保持者でWAR4位の162・3を誇るバリー・ボンズは、禁止薬物使用疑惑が影響してか10年間の投票資格最終年の2022年に66・0%止まりで、資格を失った。
日本同様に、米でもかつてはベテラン記者の厳しい目で1年目に投票しないというケースが少なくなかった。通算打率3割2分5厘、361本塁打、1537打点をマークし、現役13年間でヤンキースの10度のリーグ優勝に貢献したあのジョー・ディマジオ外野手(WAR79・1で69位)は、資格取得後3年目でやっと、殿堂入りしたほどだった。
蛭間 豊章(ベースボール・アナリスト)