◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
1月17日。阪神・淡路大震災から30年。初めて追悼行事を取材した。午前5時の神戸の街はまだ夜だった。しかし、人通りは多く、皆が同じ方向に歩みを進める。神戸市内にある公園「東遊園地」の入り口には、すでに涙を流す人の姿も。気持ちが一気に引き締まった。
私は1997年生まれ。「震災を知らない世代」だ。関西出身のため、震災の授業を受けたこともある。だが、社会人となり、改めて話を聞くと、胸が苦しくなった。それと同時に、報道を通して、伝えないといけないという使命感にも駆られた。
サッカーJ1で連覇を成し遂げたヴィッセル神戸。大きな被害を受けた神戸の街とともに立ち上がったクラブだ。高校3年時に自宅で被災した吉田孝行監督は「あの日の揺れは忘れられない」と涙をこらえた。「亡くなった方の分も一生懸命生きないといけない」。何度も言葉を詰まらせながら、当時の様子を語る指揮官。悲しさのなかに強い意志を感じた。
クラブには30歳以下の選手が多く、神戸出身の選手は半分もいない。昨季、リーグ連覇の立役者となった元日本代表FW武藤嘉紀は、出身は東京都だが、神戸を背負って戦う選手として「語り継がれた思いをしっかりくみ取って、後世にも引き継いでいかないといけない」と、かぶっていたニット帽を取り、黙とうした。
1・17の文字に並べられた竹灯籠の炎がゆっくり揺れる寒空の下、私は神戸の選手らとともに、午前5時46分に黙とうをささげた。その場にいた全員がきっと同じ気持ちで、同じ願いを込めただろう。「震災を知らない世代」だからこそ、地震の怖さを学び、人とのつながりを感じ、未来を信じ「震災を伝える世代」へとなっていきたい。(サッカー担当・森脇 瑠香)
◆森脇 瑠香(もりわき・るか) 2020年入社。プロ野球担当を経て、24年からラグビー、ボクシング、サッカー担当。YouTubeも配信。