大相撲で横綱昇進を確定させた豊昇龍(25)=立浪=が、横綱土俵入りの型を出羽海一門伝統の雲竜型に決めたことが28日、関係者の話で分かった。新しい綱をつくる30日の「綱打ち」後、同じ出羽海一門で雲竜型だった武蔵川親方(元横綱・武蔵丸)の指導を受ける。31日の明治神宮奉納土俵入りで、初めて公の場で披露する。第74代横綱・豊昇龍は、29日に東京・両国国技館で開かれる春場所(3月9日初日、エディオンアリーナ大阪)番付編成会議と臨時理事会を経て正式に誕生する。
豊昇龍は憧れの叔父の元横綱・朝青龍と同じ雲竜型で横綱土俵入りを実現する。現在の出羽海一門から輩出した横綱全員が雲竜型で土俵入りしており、豊昇龍が希望したという。この日、都内の立浪部屋で取材に応じた豊昇龍は「土俵入りについてはこれから。いろいろ聞かないでください」とにやり。「子供の時から叔父さんの土俵入りをずっと見てきた」とイメージは膨らんでいるようだった。
新しい綱をつくる30日の「綱打ち」後、同じ出羽海一門で雲竜型だったハワイ出身の武蔵川親方の指導を受ける。初めて公の場で披露する31日の明治神宮奉納土俵入りは同親方の三つぞろいの化粧まわしを使用する方向で調整を進めている。叔父の朝青龍が指導を受けたのは同じ高砂一門の曙親方(元横綱、故人)。同親方もハワイ出身だった。叔父は横綱昇進後、攻守兼備を表す雲竜型で23度、賜杯を抱いた。豊昇龍は「どうしてもみんな叔父さんのこと聞いてくる」と苦笑した。
29日は昇進が正式決定した後、日本相撲協会が使者を部屋に派遣する。この時の昇進伝達式で決意を示す口上の文言は、師匠の立浪親方(元小結・旭豊)と話し合って決めたという。朝青龍が「一生懸命頑張ります」と述べた口上は参考にしていないそうで、豊昇龍は「言わないよ。楽しみに待っていてください。わくわくするのと同じくらい緊張もある」と笑みを交えて語った。
23年名古屋場所後の大関昇進の伝達式では「気魄一閃(きはくいっせん)の精神」と四字熟語を交えた。だが、大関昇進とは「横綱では全然違う」ときっぱり。一方で、練習は「していない。今日これからやる」と余裕もみせる。来日したばかりの15年には翻訳アプリで宣言した「横綱になりたい」から10年。万感の思いを込めて、最高位への決意を述べる。(山田 豊)
◆横綱昇進の流れ
▽29日 番付編成会議及び臨時理事会で昇進が正式承認され伝達式が行われる。
▽30日 綱打ちと、一門の先輩横綱による土俵入りの指導が行われる。
▽31日 東京・渋谷区の明治神宮で奉納土俵入りが行われる見込み。
▽2月1日 元幕内・徳勝龍の断髪式で、国技館初となる土俵入り。
◆雲竜(うんりゅう)型 不知火(しらぬい)型と並ぶ横綱土俵入りの型。せり上がりの際に右手を伸ばし左手を胸の近くに当てる。綱の結び目は一輪。名前は第10代横綱・雲竜久吉に由来。伸ばした手は「攻撃」を、脇腹付近に当てた手は「守り」を意味し攻防一体を表現する。不知火型は横綱在位期間が短い傾向にあるといわれていたが、白鵬がジンクスを破った。初場所で引退した照ノ富士は不知火型だった。